※ジルはいない前提




「ごめん、別れよう」

「………」

「ベルだってわかってるよね。…私と、ベルが絶対に結ばれないこと」



私は一般人。至って普通の本当に平凡な少女。

でも、貴方は違うの。
貴方はヴァリアーという暗殺部隊の中での戦力。そして、一国の王子様。

そんな私と貴方が、釣り合うわけが無いのはわかっていたの。わかっていて、それでもベルのことが好きで。
辛くなることも知っていたのに、私は貴方の傍にいた。



「私は、ベルのことは大好きだよ。これから先、ベル以上の人なんて絶対に現れないって思うくらいに」

「…だったら、なんでそんなこと言うわけ?」

「これ以上、傷つきたくないの。傷つけたくないの。

一緒にいたいと願ったのは私。でもね、それは間違いだって分かったの」



貴方と私はあまりにも身分が違いすぎるの。
悲しいくらいに、世界が違いすぎた。



「私は、もうこれ以上続けられないの」

「自分から願っておいて、最後には捨てるなんて本当に最低だと思う」

「…でも、これで最後だから。最後にするから」




「……私と、別れてください」



泣きそうになるのをこらえながら震える声を必死で絞り出す。
涙なんて、見せられない。

ベルともっとずっと一緒にいたいと思う。幸せにだってなりたい。
でも身分の差は、世界の差は埋められない。一少女でしか無い私なんかでは到底。



「…もし、お前が本当に王子嫌いになったんなら別れてやるよ」



私の声と反して落ち着いたトーンで語るベル。



「けど、今はお前は嫌いになってなんて無い。だから別れてなんてやんねーから」

「けどっ…!」



これ以上ベルに辛い思いをさせるのは嫌だ。
そう言おうとした瞬間に視界が真っ暗になった。

ベルに抱きしめられている、と気づくのには少し時間がかかった。 



「……オレはお前が好きだし。なまえだってそうっしょ?なら、選択なんて一つじゃん。何間違った答えだしてんだよ」

「ベル…」



名前を呼ぶといっそう強く抱きしめられる。
本当は嬉しくて仕方が無い。

別れようとした決心はグラグラ揺れて、どうしたいのか分からなくなる。



「なまえ」

「な、何?ベル」



抱締められた腕を放して目を合わせられる。
前髪で見えなくても見つめられていることが分かるくらい真剣に。



「…なまえはオレとの身分とかの差で悩んでんだろ?」

「…う、ん。そうだけど…?」

「なら、さ」



そこまで言って止まる。
何が言いたいのか全く分からずただ戸惑っている私に先を言おうとしてまた詰まる。

ベルらしくなくあー、とかうん、等ストレートに言えないようでついそちらへ思考をやって別れ話のことを後回しにする。



「…ベル」

「あー…もうちょい待って」

「……うん…」



そう言ってまた悩んでいるように何度も私の方を見て視線を逸らすを繰り替えすベル。


そうして、暫くしてからもう一度名前を呼ばれた。



「なまえ」

「……何、ベル?」

「…えーっと、あー……いや、こんな状況でこれ言うって王子的にどうかと思うんだけど。もっとロマンティックっていうか雰囲気ある所で言いたいのはやまやまなんだけど」

「…ベル?」

「大体、##NAEE1##が別れ話なんて言い出すから王子がこんなに大変なんだって」

「えっ……ごめん」

「いや、なまえは謝る必要ねーし。突き詰めればオレがどうにかしてやれば良かったわけだし、…ってああもう!!!」



いきなり叫ばれて驚く。

けれど、吹っ切れた…というより開き直った感のあるベルが放った言葉にはもっと驚いた。



「なまえ、王子の姫になれ」

「……え」



言っている言葉は聞こえているのに思考が追いつかないなんてどれだけ驚いているのか。

嗚呼、でもこれはつまり



「プロポーズ…?」

「!!!」



思いっきり私から顔を逸らして激しく頷く。

前髪から覗く肌は赤くなっていて本当にベルらしくないところが本気だってよく分かる。


別れ話をしていたのになんでこうなったのか解らないことと、あまりの嬉しさが同時に押し寄せて固まっている私に更にダメ押しされる。



「…身分なんて結婚すりゃ変えられるっしょ」

「世界なんて壊せばいいだけの話」







「なまえがそれを望むのなら」




あまりの驚きに世界がぐにゃりと歪んでクラクラする中で、ベルの姿だけがはっきり見えた。






(もう答えは出ていたようです)



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