「メリークリスマス!!湯女姉、茜ちゃん!!」
今日は12月27日。世間一般で言うところの「クリスマス」という日から2日が過ぎた。
まぁ私は大してこの日に興味も意味も無く、ましてや茜は知らないでしょうからいつもどおりの日だったのだけれど。
知っていたとしてもこの家に来るプレゼントはないでしょうねぇ。ええ、本当に。
サンタとやらが実際に居るなら別なのだけれど。
閑話休題。
この27日、クリスマスから2日過ぎの今日「メリークリスマス」と叫んで馬鹿がやってきた(一応言っておくが全裸ではないわ)。
「……よくそんな格好で外歩けるわね。
そして今日は27日よ。もう2日遅れてるわ」
「万年浴衣の湯女姉には言われたくなかったよ。んで、昨日と一昨日はバイトがあって来れなかったから今日来た。で、茜ちゃんは?」
「まだ寝てるわ」
2日遅れの今日、眼に痛い真っ赤な色の衣装を纏い、白く大きな袋を両手に抱えて完全なる不審者としてきた馬鹿はなまえ。
このアパートの近隣に住んでいる子よ。
「湯女姉、今物凄く失礼な想像したでしょ?」
「ワタクシ、人への敬いを常に忘れない子ですのよ。そのような想像するわけありませんわ」
「うそつきー」
なまえが笑いながら嘘を見破る。
この笑顔は茜と似たものがあるわ。
「で、何しに来たのかしら」
「今日はクリスマスですよー。クリスマス!サンタ!!あと…何か!!!とくれば?」
「分かるわけ無いでしょう。そして今日はクリスマスでは無いわよ」
「そう!プレゼントなのです!」
「聞いて無いわね」
突っ込んでみるがまるで意味を成さない。
なまえを見ていると私がまともに思えてくるわぁ。まぁ、嘘ともいえないところね。
「おー、なまえおにーちゃん!」
「あら、茜。起きたのね」
「静か過ぎて目が覚めたぞー!!」
「ほら、貴女が五月蝿いからでしょう」
「うう…ごめんよ、茜ちゃん…」
そうこうしていると茜が起きてきたわ。
なまえの格好に突っ込まないのは私の格好を見慣れているせいからかしら。
…本当なわけ無いでしょう。
その後、女々しく倒れ泣くフリをするなまえ。
数秒後には復活していたけれど。
「と、言うわけで」
「どういうわけよ」
「そういうわけだよ!!で、こういうわけだからクリスマスプレゼントを持ってきたぜー!!」
我を崇め称えよ!といいながら胸を張る。
……よく見ると私以上あるわね。私が小さいわけでは無いけれどっ!ええ、本当に。本当だわ。
未だにポーズをとっているなまえの胸に向けていると茜が横から浴衣の袖を引いてくる。
「ねー、湯女お兄ちゃん」
「何かしら、茜」
「くりすますって何?」
まあ、そう来ると思ったわ。
大江家ではそんな行事なかったもの。
私は予想していたけれど、なまえにとっては予想外だったらしい。驚いて茜を見ている。
「ええっ!?茜ちゃんクリスマス知らないのかい!!?」
「うん。何ーそれ?」
「そうねぇ……。
今のなまえみたいに真っ赤な服を着て髭を生やした男が煙突から不法侵入してきて少年少女の枕元や靴下の中にモノを置いてくる日よ。ちなみに一昨日がそう」
「そうなのー?じゃ、僕にも来る?」
「その男は常にストーカーをして見張っていて、自分の基準的良い子にしか渡さない嫌な奴だから来るか分からないわねー。ってか来なかったでしょう」
「…僕は悪い子なのかー」
「湯女姉…。間違って無いけど…間違って無いけどさぁ!!そして茜ちゃんは良い子よ!」
「当たっているでしょう?
ええ、私よりは良い子でしょうね」
「根本はね!!
湯女姉より酷い子は中々居ないと思うよ!」
別の話を同時進行しながら話し続ける。
そして、いきなり話を中断して茜に振り返り、湯女姉の言ったことは間違ってるからね!そう言って茜に正しい(サンタクロースについての話に正しいなんていえるのかはともかく)教えるなまえ。
放っていては話も進まないからねぇ。
何の?だなんて質問は禁句ですわ。すわすわ。
「で、今度こそ何がしたかったの?貴女は」
「あ、そうそう。簡単に言うとプレゼント持ってきたんだよ。二人に」
「おぉー!!なまえおにーちゃん優しー!」
「でしょー!さっすが茜ちゃん、分かってるね!……そんな茜ちゃんには最新ゲームカセットを差し上げよう!!!」
「おぉっ!ありがとうなまえおにーちゃん!!」
なまえが袋から取り出したゲームを受け取った茜は、眼を輝かせて早速やろうと行動を始める。それはもう迅速に。
「んで、湯女姉には」
「私には」
「何やると喜ぶか全く分からなかったから茜ちゃんのゲームと同じ値段で現金5000円」
「…何なりとお申し付けくださいなまえ様」
「跪かれた…!!」
この子が天使に見えてきたわ。今の家の経済にとっては神並よ。
たとえ今日がクリスマスであろうがなかろうが現金をくれる人は良い人だと思っていますの。ええ、本当に。
「それとね」
「まだ何かあるの!?」
「キャラが変わってるよー…。料理の材料とケーキ。3人で食べようと思って」
「マジですかい」
「マジですよー」
ほら、といって見せた白い袋の中には材料とケーキが入っていた。だから抱えていたのね。
「……貴女が輝いて見えるわ」
「キラキラー!!」
「いやぁ…それほどでもあるけどー!」
にひひひ、と少々不気味な笑い方をして存分に照れる。
その後はとりあえずまた始めに戻って2日遅れのご挨拶でぱーてぃーは始まった。
「それじゃあ、2日遅れだけど気にせず改めて、」
「「「メリークリスマス!!」」」
まぁ、偶にはこんなのも良いんじゃないかしら?
(次は正月だから!湯女姉、今日の出費の3倍のお年玉よろしく!!)
(よろしく、お兄ちゃん!!)
(待て待て待てぇい!!)
メリークリスマス!!
何故マイナーすぎるみーまーを書いたのか。
何故みーまーの中でも湯女を選んでしまったのか。