「………今日で1年、だったっけ…」
私の彼氏…折原臨也と付き合ってから今日で一年。
何故だかは分からないけれどいつの間にか臨也を好きになっていた私。
ありきたりだが、どうせ臨也にはつりあわないと思い遠くから見ているだけだった。
だった、のに。
丁度1年前のあの日、臨也に告白されたあの驚きは今でも忘れられない。
臨也から私に、という時点で(昔の)私にとってはかなり驚いたというのに、いつもの臨也とは違って眼を背けながら小さな声で告白されたときは………。
今思い出すと、ぜひとも録画をしておきかった程のものだった。
今となってはもうありえない。
「変わったのか変わって無いのか……」
「俺は変わって無いと思うけどね」
突然後ろから聞こえた声。
もういつものことなので大して驚くことではない。
「そう…かな?だって私に告白してくれたときの臨也ってもっと可愛らしさと初々しさがあったと思うし」
「………いい加減、そのときのことは忘れて欲しいんだけど」
「大丈夫。絶対に一生忘れないから」
ニッと笑うとため息をつきながら私の隣に座ってきた。
「今日で1年だよ、臨也」
「分かってる」
「せっかく1年経ったんだから何かしたいな」
「例えば?」
「………どこか一緒に出かけるとか」
「できないしさせない。俺がそんなこと許すと思う?」
「せっかくの1周年なんだからいいじゃんか」
「だめ」
そう言うとぎゅっ、と私を後ろから抱きしめられ、身動きが取れなくなった。
偶には良いと思うけどなぁ…、と言って反応を待ってみる。
すると、
「……せっかくの1周年だから今日はこのままでいたい」
後ろから小さな声でそう言われた。
……臨也のこういうところは変わってない。
こういった台詞に私が弱いということも。
まぁ、そもそも私だって臨也とずっと居られれば別になんだってかまわないんだから。
「じゃあ、今日はずっと臨也と一緒にいたい」
「普段から居るけど」
「じゃなくて、少しも離れないでいたい」
いいでしょ?と分かりきった答えを求めれば、肯定の代わりに抱きしめられている腕の力が強くなった。
「来年も再来年も、10年後も何十年後もずっと一緒に居られるといいよね」
「居るに決まってるから安心していいよ」
「根拠なき自信?」
「なまえじゃないんだから」
「それはちょっと酷い……」
無意味な会話をゆるゆると続けながら幸せな時間を満喫する。
………やっぱり、こうやって臨也と居ることが私にとって一番幸せだと思う。
「臨也とはこれからも離れたくないな」
「当然でしょ。俺だって、これからも絶対になまえを離す気はないから。
それにどっちの意味でも離れられないでしょ?」
「まぁ、コレがある限り本当の意味で離れられないよね」
軽く笑いながらコレを……首から部屋の隅へと繋がる鎖を指で持ち上げて見せる。
いつだったか忘れたけれど、あるとき気づいたらこの部屋につれられて鎖で繋がれていた。
驚いて固まっているところに臨也が来て。さっきと同じように後ろから抱きしめられ囁かれ……。
普通ならば拒絶しているだろうけれど、どうにも、私はよっぽど臨也が好きらしい。自分自身も驚くほどあっさりと監禁を認めてしまった。
今となってはもうこれが『普通』なので私にとってはあまり気にするようなことではないかな。
むしろ愛を感じられて良いと思うほどになっている。
「身体だけ?」
「ううん、もちろん心も」
じゃなきゃそもそも今ここに居ないよ。
そう言えばふわりと私にしか見せないような優しい笑顔を浮かべた。
「ベターだけどなまえさえいれば他には何もいらない、かな」
「私も」
わざと鎖の音をたてさせながら臨也に抱きつく。
「赤い糸なんかよりもこっちの方がよっぽど愛が深いと思うのは私だけかな」
「眼に見えるものなんかで愛の深さを測るつもりは無いけどね」
鎖で縛る人が言えた台詞ではないのだけれど、臨也に愛されているという証なら簡単に許容できてしまう。
「まあとりあえず、1年間ありがと、臨也。
これからも愛し続けてね」
「もちろん。君も愛され続けてよ」
赤い糸の代わりに、鎖をお互いの指に巻きつけて笑った。
(貴方だけのもの)