人間の死とは何なのだろう。
偶にこんなくだらなくて無意味なことを考えるのは、人間の特権だと思うのだけれど。


心臓が止まること?
否、心臓が止まったとしても生き返ることはある。心臓が止まるだけでは死んだとは言えないだろう。

全ての身体機能が停止したとき?
ああ、それは確かに死んでいると言えそうだ。ほとんどの人間は死と言われるとその状態をきっと思い浮かべる。

脳のみの停止は?
これは難しい。俺としては意識のない意思のない人間の体など死んでいると言いたいのだけれど、稀に、本当に稀に目が覚めることだってあるのだから断言は出来ない。

人格の消失?
なるほど、それは面白い。その人間が生きている身体を持っていたとしても、例えば記憶喪失や脳の腫瘍、多重人格なんかでその本人と言える人格が消えてしまったり変わったのなら、それはその人にとっての死と言えるかもしれない。

では忘却?
……ああ、これが一番しっくりくるかもしれない。先の例の様に、自らの人格を忘れ去ったのならば後に残るのは全くの他人だろう。そして、その逆もまた然り。
他者の誰もかれもに忘れられたのなら、例え心臓が身体が脳が記憶が心が、生きているという状態であったとしてもそれはきっと死なのだ。必要とされないのではない。存在することすら忘れ去られたのならば、きっと。


……まあ、元々俺には目もないし口もないし鼻もないし耳もないし顔もないし首もないし腕もないし足もないし胴体もないし胃もないし腸もないし肺もないし心臓もないし脳もないし心もないしあるのは平面上の紙に書かれた線と点だけなんだから、上記のほとんどにあてはまらないんだけどさ。

心臓にしろ身体にしろ脳にしろないから意味ないんだよねえ。ついでに言えば人格なんて書く人描く人創る人によって変わるし、俺の記憶媒体は紙とデジタル機器だけだし。

普通の人間なら自分とは自己と他者の二つによって構成されてると思ってるんだけど、俺は、俺らは他者に委ねる以外の選択肢がないから俺にとっての死とは最後のやつが一番で唯一なわけだ。


そしてそれはつまり、この思考回路すら俺の考えてることであって俺の考えていることではないということでもあるのだけれど。





……あーあ、俺いつまで"生きて"いられるんだろ。

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