「兼さん」と。そう主から呼ばれる度に、少しばかり歓喜に満たされる。
ほんの一拍。一呼吸にも満たないくらいの間をおいてからの返事になるのはその所為で。
きっと主は俺が間をおいてることすら気付いていないんだろうが。

兼さんという呼び名はなんてことはない、先に本丸に居た国広の影響だというのは容易に想像できる。深い意味はない。只々聞き慣れていた名を当てはめただけ。


それにどれほどの歓びを覚えるか。
ああ、だってきっとあんたは気づいちゃいない。
他の刀剣は全て刀の名をそのままなぞっただけであり、俺が、俺だけが違う名で呼ばれる『特別』なんだ。

言の葉は言霊となり世の事象を縛る。即ち、言霊の根底となり得る名とは、世界を構築するものであり生きとし生けるものの全ての魂を縛るものであるのだ。そんな名が、俺の世界が、魂が、特別だなんて。なんて笑えることなのか!!



「兼さん」

「……ん。おう、どうした主?」

「新しい刀剣が本丸に来たから、紹介しにきたの」



ああ、だからこの『特別』だけは他に譲ってくれるなよ。

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