ソラとダイチ

「ソラが好き」

ずっと、ずっと言ってた。
好きで仕方なくて、一番に話せる友達になりたくて、何でも真似した。
君が空を見るのが好きだったから、当然俺も真似をした。そしたら俺も夢中になって、気が付けば引き込まれてた。


一人称が“僕”から“俺”に変わった頃。

君が空を見なくなった頃。

俺は恋をしている事に気が付いた。


なのに同じ場所に続いてるハズの道は、いつの間にか違う方へ伸びていて。
君はどんどんその道を歩いていて。
分岐点で立ち止まる俺は、その背を見る事しか出来なくて。

「なぁ」
「ん?」

帰宅途中のY字路。
呼び止めて振り向いてくれる君は、こんなに近いのに。
実際はすごくすごく、遠い。
「ソラが好き。大好きだ」
「へいへい。お前の空好きは知ってるよ、天文マニアめ」


そう言って、空を見上げる君。
俺も合わせる様に見上げた。
昔は2人で見上げた空を。


「…卒業…すんだな」
「まあな。頑張れよ、受験生」

ポン、と肩を叩いて君は歩き始めた。
たった一週間なのに。
7日遅く生まれただけなのに、先を歩く君はどんどん進んで行ってしまう。
「…好き、だ」
言葉は届く事無く、サラサラと空に溶けていく。
だって、俺の“ソラ”の意味を読み取るのは、いくら君でも出来やしない。
だって、君はきっと。
「…宙【そら】…」
連呼されてる単語が自分の名前だなんて、考えやしないから。
届かないんだ。絶対に。

「…大好き…愛してる…」

僕らの道は、交わらない。



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