Sugar passage


くぴくぴと音を立てて飲む時キミは本当に可愛い。


Sugar passage


僕には理解できないんだけど、あの甘い飲み物がキミを幸せにするらしい。
黒いはずのコーヒーにたっぷりミルクと砂糖をいれた幸せの塊を両手で包み込んで、少しずつ大切に傾けるキミ。

可愛らしいその行動は見ていて飽きない。

満足げな表情でマグカップを机に戻したキミと、ばちりと目があった。
にこりと微笑むと一気に現実へ引き戻させられたような目で睨みつけてくる。

一応デート中のランチタイムなんだけど、僕の機嫌の斜め下をいく彼女は微笑みが気に入らなかったらしい。
じと目をしても拗ねてるだけにしか見えないし、自分から視線を外すのは嫌とばかりの反抗的な姿を見てるとまるで保父さんになった気分だ。

明日香と同い年のはずなんだけど、明日香はこんな事する前にかならず口がでるから新鮮な気持ちになれる。

「…」

勝ち負けのないにらめっこは続く。
段々僕は顔がにやけてきた。多分唇の端が引き攣ってるだろう。

彼女は段々唇が尖って、眉間にシワが寄ってきた。
その可愛い顔に亮のようなシワが入るなんて考えたくない。

でもシワはちょっぴりだけキミを大人にみせる。
「眉間にシワを寄せても可愛いよ、少し大人になったみたいだ」なんて言おうもんなら帰るまで口を聞いて貰えないだろうから言わないけど。

それは僕にとって拷問に等しい。せっかくこぎつけたデートなんだからもっと距離を縮めたいしね。

「…」
「…」
「…」
「…」

耐え切れなくなったのか再びマグカップを持ち上げてごまかす彼女。
僕も無糖の紅茶へ手を伸ばす。

僕が一口のところ、キミはくぴくぴと何度も喉をならす。

唇の端の引き攣りがとれたぐらいで、紅茶をソーサーへ戻すと彼女もマグカップから唇を離した。

幸せに包まれたような顔でふぅと息を吐くキミは、また僕を見てむすっとした。

どうしてそのころころ変わる感情が僕には楽しくて仕方がない。
頭を撫でたくなるのは僕だけじゃないはずだ。

「…」
「…」

まだまだそのコーヒー牛乳と張り合ってみようと思う。

いつか僕の笑顔だけでキミを笑わせられるように

恋の魔術師にかけて、ね。





Up、10/09/26


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