Are you Barentain?


「はい!ハッピーバレンタイン、吹雪!!」
「……ありがとう?」
それは嬉しそうな悲しそうなどちらともつかない笑いで吹雪は答えた。




Are you Barentain?




「…あれ、僕が甘いもの苦手なの知ってるよね?」
「うん、そりゃね付き合い長いし?顔に似合わないものが好きなことぐらい百も承知ですよ」

ニコニコと名無は笑う。
まるで本命チョコのプレゼントが上手くいった乙女のように。

「…えーと」
「だからそれは私の気持ち!受け取って!!」
「うんそれは凄く嬉しいんだけど………開けてもいいかい?」
「どうぞ!」

小さな赤色のリボンをつまんで引っ張る。

かさりという音と共に開いた紙箱の中には、小さくとも手の込んだトリュフが6つ。

香るのは甘いカカオ。

笑いが引き攣りに変わる。


「因みにハズレはないから」

それは全てまともーーきちんと生クリームも入ってココアパウダーもかけてーー詰まるところは、甘いという事なのだろう。


「…うん、ありがとう名無美味しく食べさせて貰うよ」
「えー今食べてよ」

少しだけ彼女の愛らしい笑顔に悪魔がタブった。

「…名無。僕何かしたかい?」
「んーん、何にも?」

こんな嬉しくも悲しい仕打ちを受ける節は思いあたらなかった。

トリュフたちは食べて貰えるのを今か今かと待ち構えている。

「ふーぶき?食べてくれないの??」
「…美味しく頂かせてもらうよ」

いつの間にか名無はニコニコからニヤニヤに変わっている。

食べれるなら食べてみろ、そう目は楽しんでいた。


(いつもからかってセクハラしているツケ…かな?愛情表現のつもりなんだけど…あぁ凄く丁寧に作ってある……甘そうだなぁ…ん、凄く丁寧…?あの名無が?僕の為に??)

「吹雪ー?だから別に毒とか入ってないから」
「うん、わかってるよ」




「だって名無が作ったんだからね」


ひょいと吹雪は一つのトリュフを摘み上げて自身の口の中に放りこんだ。

「!」
「………………うん、甘いねぇ」

ぺろっと指についたココアパウダーを舐めとる吹雪。
それを指さしながら、わなわなと震える名無。


「…た、食べた」
「………なんだい、やっぱり毒でも入ってたのかい?」
「まさか!毒どころか1番手がかかってるよ!!あー!吹雪は食べられないと思ってたのにー悔しー!」

名無は地団駄を踏んで悔しがる。

「…何だか色々間違ってる気がするけど、名無。これは僕が貰っていいんだよね?」

「どーぞー…ちぇ、つまんなーい。吹雪を苦しめてやろうと思ったのに。食べれない吹雪を脅そうと思ったのにー」

「ひどいなぁ…ねぇ名無」
「んー?」






「これ、勿論本命だよね?」
「……!?ち、違う!!違うから!!……!!」

紅潮した頬の名無に吹雪は素早くキスを落とす。

「……んな!?ふ、吹雪返してそれ!!返しなさい!!」
「やーだよ!名無からの本命チョコだもの自慢しなきゃ!」
「本命何かじゃないってばー!!」


吹雪は取り上げようとする名無を上手く交わしながら次のチョコに手をかける。

苦い苦いバレンタイン。






「ホワイトデーは三倍返し、だね!!」
「いらないから返して!!」

Up、09/02/13


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