泣き笑い下手


「…名無?」
「あ、亮さん!!」


泣き笑い下手


「珍しい、吹雪さんと一緒じゃないんですね」

曇りのない笑顔。
人が多い購買所でもすぐに見つけられる。

どうしてだろうか。

「…あいつはクロノス先生に呼ばれている…………何か用なら伝えておくが?」
「あ、いえ別に用とかはないんですが…」

「そうか…君も明日香と一緒じゃないんだな」
「はい、お家の用事で少し電話してるんです」


だから…と俺に紙袋を二つ見せる。

「ドローパン、買ってきたんです」
「そうか」
「天気も良いですから、テラスで食べようと思って…デザートはプリンです!」

紙袋からがさがさとカッププリンを出してまた笑う。
幸せを振り撒くその笑顔。
俺には浮かべられない心からの笑顔。


「甘いものが好きなんだな」
「はい、大好きです!」

好き、と言う単語に何故か心にちくりと反応した。




ふと気付いたように彼女が、小首を傾げて聞いてくる。

「亮さんは何を食べるんですか?」
「…吹雪を待って学食でも食べようと思っていたが、間に合わなさそうだな……俺もドローパンにするか」

「じゃあ一緒に食べませんか?!」

「………いいのか?」



「はい、私、亮さんとご一緒したいです!」



また、ちくり。



「あ、じゃあ亮さんの分のドローパン買って来ますね!!」

スカートを翻して彼女がまだ人込みがごった返す購買へ駆けていく。

その小さな背中に

「っ!名無!!」

俺は叫んでいた。




くるりと振り返った彼女はきょとん疑問の浮かべている。


「……いい、自分で行く」



少しだけ彼女が申し訳なさそうな悲しそうな顔をした。


そんな顔をさせたい訳じゃない。




「…………ついてきてくれるか?」
「!……はい!」



追い付いた俺と歩き出す。


幸せな、時間。






(あら兄さん何やってるの?)
(しぃー!今イイ雰囲気なんだから!!)





Up、08/12/20


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