その日、はじまりの日に似て
「きみがそんなに緊張してどうするんだい」
「そうですけど……」
本番を向かえる舞台袖は忙しなく人が動く。
背を守るように歌仙が立ってくれているおかげで、私はぶつかられずに色とりどりの光さす舞台を見ていられた。
「どれだけ経験しても、慣れないものは慣れません」
「そうだけどね、演者よりも緊張するのは如何かと思うよ」
胸の前で祈るように握りしめた両の手にそっと歌仙の手が重なる。
「大丈夫、我が本丸の刀剣男士はみなやる時はやるさ」
一本一本結び目となった私の指を節がしっかりとした指がほどいていく。
すっかりほどかれ、頭上から顔を覗かせた歌仙の顔はいつものように呆れた笑顔。
「自信を持て、我らが主……その顔は雅じゃない」
温もりを感じて、背筋が伸びる。
審神者となったあの日から変わらない歌仙に、そうねと笑顔を返した。
その日、始まりの日に似て
Up,19/12/08