ライン


ミネラルウォーターから口を離してベッドに腰掛ける。
タオルで頭を拭いていたら後ろで女がもぞりと動いた。


ライン


「起きろ、8時だぞ」
「…まだ8時……………あと30分は寝れる」
「ここはお前の部屋じゃない、一度寮に戻らなきゃいけないだろう」

だから起きろと手を伸ばして、やめた。
白いシーツの上に薄いタオルケットにから露出した彼女の肩は、細く陶磁器のように美しい。
触るのが、怖かった。

「んーりょぉ……全部貸して」
「同じ授業をとってる俺にそれをいうのか?それに体操着はどうする、今日授業のテニスで必要だろう」
「体操着は……あきらめる。……適当に奪う……」

んー…っと寝ぼけ眼が自分を見てくる。
半開きの瞼から瞳が疑問の色を浮かべた。

「あれ……男子がテニスで、しょ…?」
「合同になったとさっき吹雪からメールがあった」
「そっかぁ…やったぁ。亮といっしょー」

へらっと笑う彼女の頭を撫でる。
寝癖が着いた髪を掻き分けて額に手を置く。

「あったかい……」
「シャワーを浴びたからな。ほら起きろ」
「……………やだ」

冷たい額が逃げる。ごろんと自分に背を向けてまた触れられない肩が視界に入った。

「単位を落とすぞ」
「…………一回ぐらい休んだって大丈夫ですぅ……ぅ」
「その台詞が何度目だ、起きろ」
「……………………ぅー…」

もぞもぞと背中を丸めて膝を抱える。
するりと二の腕からずり落ちたタオルケットから背中が覗く。

触れられない、白い肌。
何故だろう。
散々彼女の肌に指を滑らせておいて、触っていないところなんてないのに。

愛しさと欲望の間ににあるのは、ちょっとした恐怖感。

……あぁでも、触れられないなら、それを越えてしまえばいい。
飛び越えて着いた場所はーー

「…………!!」
「…さぁ、起きろ」
「………びっくりしたぁ」

突然キスしてくるなんて。

「…………起きただろう…ほらシャワー浴びてこい」
「…うわぁ、やだ今日槍が降るかも……」

自分の行動を予期してなかった彼女の顔は真っ赤になっている。

予期していなかったのは自分もだが。

「…天変地異の前触れ……」
「……失礼だな、人の行為をそんなふうに言うなんて」
「だって、ねぇ………でも、目覚めはすっきり爽快ですよ、王子様!!」

ありがとう、と抱き着かれて顔がほてるのがわかった。




(あ、やっぱりいつもの亮だ!)
(…放っておいてくれ)





Up、08/9/23


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