色堕ち#


丸藤亮は気付いていた。
自分が好きになった相手がどうなるか、どうなってしまうのか。

だから聞いた。

「愛してもいいか?」、と。免罪符を求めて。犯すであろう罪と罰を恐れてー彼は扉を開いた。



色堕ち




どこかで自分は黒でしか構築されてないのではないか、と感じることがあった。
白を纏った身体は湿気を吸ったみたいにいつも鈍重だ。纏わり張り付いた空の色の青も、まるで台風の目で見上げる鮮やかさ。いつ荒れ狂う雷雲が立ち込めるかわからない。

それはまるで愛しい彼女に触れようとするのを妨げるようだった。そう、押さえ込むためのカラフルな鎧。
そんな幻想的な色の支配はまるで優しいメリーゴーランドに似ていた。

色とりどりで鮮やか、一度も同じ景色を見せずいつも違う人を乗せる。
けれどそれでいて本質は永遠に同じ事の繰り返し。ただただ回り続け、メロディーを奏でる。

ぐるぐる


ぐるぐるぐる


ぐるぐるぐるぐる






そうして俺は彼女を選んだ。
メリーゴーランドに乗る彼女は見立ててやったドレスを着て、いつも微笑む。偽物の馬に横座りした彼女は俺を見てはかなげに手を降り続けていた。


同じものを見せないはずのメリーゴーランドはそこだけ切り抜いて隔離され流れ続ける。まるで映画の世界のなかに一人だけ生中継で動いている人がいるかのように。
それは永遠にのこる黒で構築されたリアルなフィルムの中の世界。







それを焼きつくす赤色が彼女のドレスと同じ色だったことに俺は気付かなかった。















「………亮」

「なんだ」

「…………………やっぱり…なんでもない」

「…そうか」

「……………………………………あのさ…………その、明日買い物に行かない?本土に行って………その、デート…………でも、さ」

「…………すまない、明日吹雪たちとデュエルの先約がある」

「…………そっか、うんごめん。突然だったね」

「謝ることじゃない、また、な」

「…………そうだね、また…………………行けたらいいね」

「…………名無」
「……ん?なぁに??」


「「愛している」」








「…っ!!」

「…綺麗だな、お前にはやはり似合う」

「いっ!!やぁ…………ひっ!」

「似合っているぞ…?」

「ご、ごめっ!………ごめん、なさい!!

「何故謝る……礼を言うならともかく…………あぁ礼などいらないぞ」

「…う、うぁぁあぁああぁぁあ!!!!」

「暴れるな名無。暴れたら…………零れてしまうからな、大人しくしていれば綺麗に広がる」

「やぁぁあ!!い、痛い!!痛い、痛いいたいいたいイタイイタイ!!!!!あぁああぁ!!!」

「綺麗だ……さすが俺が選んだ女………名無、お前は1番美しい……最高の女だ」

「……あ、…がっ!!い、たい……イタイよ………いた…………い…………よ…………………………………………り、…亮」

「お前には紅が1番似合う………お前自身が作り上げたこの紅色が、な」

「………………り…………………う…………………………りょ……う」

「いい子だ……待っていろ…もっと、もっと着せて………染めてやるからな」

「………………………………あ…………い…………………………………………………………………………………りょ、う」

「暗い赤よりも、明るい赤の方がお前には映える…………あぁ口紅もつけてやろう」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………う」

「さぁ…………………よし、これで完成だ。よく動かず我慢したな、偉いぞ名無」

「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

「…最高だ、この世でお前に勝る女はいない……………そしてこれほど紅が似合う女もいないだろう」

「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」

「ふふふ、ふはははは!!!………………名無、俺は、お前を……………っ!!!!!!!」


「「愛している」」







銀色のメリーゴーランドは酸素によって赤から黒に変わった錆が歯車を壊し終焉を迎えるだろう。
そしてら扉は彼の手でー閉じられた。





Up、08/8/12


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