背中合わせの恋情


ダスカへ帝国軍の封鎖線を突破し、たどり着いたレスタルム。
リウレイホテルでイリスから王都での話を聞き終える。
心のどこかにある気がかりは、茹だる様な暑さのせいにした。



背中合わせの恋情



イリスも部屋に帰り、ノクティスはベットで就寝。
起きているのは自分と、風呂に入っているプロンプト。そしてさっきからベランダで電話しているグラディオ。
シャワーの音と、時折ベランダから入ってくるグラディオの低い声を聞きながら
イグニスはベッドの上に道具類を並べる。

(やはり、足りないか・・・・)

戦闘に使用する回復薬等が不安を覚える個数まで減っていた。
先の大規模な戦闘、ダスカ地方へ出るための封鎖線突破で使用した量が予想をかなり上回ったのだ。

(買い出ししないとまずい、か)

ちら、と隣のベッドで丸くなるノクティスに視線を向ける。
頭がかくれるまでキルケットをかぶり、ぐっすりと夢の中の彼はどうせ明日早くにはおきれないだろう。
少し遅い時間だが一人で今買い出しに行こうか?


ーーー内緒の買い物ほど、こそこそ買ってはダメなんですーーー


ばっと扉を思わず扉を振り返る。そこに彼女、ナナはいない。

(幻聴・・・か?は、俺も疲れているんだな)

自嘲めいた笑いが零れる。
王の剣の補給部隊の彼女。彼女との会話はいつも城の地下、備蓄庫の片隅だった。
二人きり、ほのかな明かりのカンテラ、つなぐ小さな手。

「イグニスに会えて・・・ほんとに良かった」
「あぁ俺もナナに会えて、良かった」

自分は王子ノクティスに
彼女は王レギスに

話すことは、仕えること、仕事の話しばかりだった。

ーーー隠れながらの行軍時は、道具の調達を敵に悟らせないようにしないといけませんーーー

ドアを見続けるとナナの声が頭の中に響く。

ーーー敵に追われる時は、行動が追われているんですーーー

響くその声に思わず目を閉じる。


俺は、イグニス、スキエンティア

己の名を頭の中で唱えて、落ち着かせるように息を吐く。
残してきた者の名前が口から零れ落ちそうになるのを右手を握りしめて耐えた。

(・・・どうか無事でいてくれ)

今まで負の感情は、思索にふけることで解消させてきた。
怒りも悲しみも寂しさも突き詰めて考え抜いて自分を納得させてきた。
それが王子ノクティスに仕える軍師たる自分のプライドでもある。
けれども彼女がいないという現実の喪失感はどんなに考えてもぬぐえるものではない。
彼女の所属する王の剣はほぼ全滅したという。

考えれば考えるほどーーーーー胸の奥に泥はたまっていった。

俺は、ノクトの軍師だ

ここを離れて今すぐにでも愛するものを探しに行きたい衝動を消す。

生きている、生きているんだ。そう思い込むため、己の腕に爪をたてて痛みに耐えた。






「あ、なんだアイテム足りねえのか?」

いつの間にかベランダから戻ったのか、グラディオの声で我に返る。

「あ・・・ああ。そうだなポーションとエーテルあたりが特に足りなくなりそうだ」
「そうかよ、ちと遅いが今から買いに行くか?」
「・・・・いや、明日にしよう」
「まだ、おれは動けるぜ?」
「夜に大量の買い出しをすれば目立つ、帝国軍を警戒するに越したことはないから」
「なるほど。だな、明日にするか」

そうとなれば、寝るべきスペースに広がる道具類を片さなければ。
音をたてないようにアイテムを袋に戻していく。
グラディオはどっかりと椅子に座って、何故かこちらを見てくる。
不快ではないが、理由もわからず見られるのは居心地が悪い。

「なんだグラディオ?」
「いや、お前大丈夫か?」
「・・・少々疲れてはいるが、大丈夫だ」
「・・・聞き方悪かったな」

グラディオは座り直して、端末を見せながら言う。

「コル将軍に情報、集めてもらったらどうだ?」
「、必要ない」

何の情報をと、問い返さなくてもグラディオの言いたいことはもうわかりきっている。

「・・・たく」
「俺たちはノクトを支えるのが使命だ。今必要な情報は帝国の状況、外の情報だ。王都の状況ではない」

がりがりと何か言いにくそうに頭をかくグラディオ。
何度もガーディナを出てからこの問答を繰り返してきた。

「ノクトは王の力を集めなければいけない。いるかもしれない味方を探すよりも、今優先されるのは敵の情報だそれ以外はコル将軍に任せた方が効率がいい」
「それはもちろんだ。だけど王の剣を見かけたら連絡もらうくらいはいいだろ」
「グラディオ」


「俺と彼女には使命がある。それを超えるようなことは、しない。そう言っただろう」


王となるノクティスの御身のため、生涯を賭して支えると誓った。
例えその道に寄り添ってくれる人ができたとしても、その使命は変わらない。
それはナナも同じだ。


「お前の気遣いには感謝する。だが大丈夫だ」
「・・・ほんっとお前頑固だよな」
「ふ、お前もだろう?」
「・・・後悔、しねえんだな?」


「ああ、しないさ。俺もあいつも」

グラディオの真剣な顔にそう返す。
揃いの首飾りが冷たく感じた。



Up2017.12.29



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