「私と添い遂げろ。」
「………は?誰が?」

三成の言葉に俺は自分が誰なのかも忘れて思わず突っ込んだ。


やあやあ、皆さんこんにちは。
何故か徳川家康に成り代わっちゃった三上明です。
俺は今、大坂城に来ています。

天下分け目の関ヶ原から早1ヶ月。
その場の流れによって東軍の総大将になってしまった俺は西軍総大将、石田三成と拳ではなく、口で語り合い勝利を勝ち取った。
なんて言うか…うん。それもそれで凄かったけどね。
だって三成、言っても聞く耳持ってくれないし。
問答無用で斬りかかって来るから防ぐだけでいっぱいいっぱいだ。
話を聞いてくれそうな刑部はそれを知っててわざと言わないし。
最終的に話をつけてくれたのは秀吉公でした。

え?秀吉公が生きてるのかって?
生きてる生きてる。日常で生活する分には、充分元気だよ。
確かに離反はしたけど俺にあの人を殺す勇気はありませんでした。
その先に何が起こるのかを知っていれば尚更に。
……結局は関ヶ原勃発しちゃったりしたけどね。

もう戦は無理だろうけど、日常生活には全く不自由はないと思われる。


まぁ、そんな感じで勝軍の将として敗軍の将の今後を話し合うために三河から遥々大阪にやって来たわけだが…なんて言った?
今、三成なんて言った!?

「何を今さら、貴様に決まっている。」
「……待て待て待て。落ち着くんだ三成!!」

真顔言い張った三成が異様に怖い。
何が今さらだ!!
んな話今までしたことねーだろーが!!
つか、つい最近まで俺達、全国巻き込んだ大戦してたよね!?
全く俺の話聞かずに命狙って来てたよね!?
好きだ。と言う言葉以上に三成に似合わない言葉はないだろう。
ジリジリと詰め寄る三成からジリジリと無意識に体が後退していく。

「……家康。」
「なっなんだ、三成?」
「何故逃げる。」
「は…ははは。何を言っている三成。ワシは逃げてなどいないぞ。」
「嘘をつくな。」
「ついていない。」
「逃げるな。」
「逃げてない。」

そんな下らないやり取りをどれくらいしていたのだろうか。
ついに、背中に壁の感触を感じ、サアッと青ざめる。

「どうした、顔が青ざめているぞ。」
「三成、そろそろ離れてくれないか?近すぎるんだが。」
「嫌だ。」

少しでも動けば口と口が触れ合ってしまいそうな距離。
危ない目をした三成が俺の目に映る。

あああああ!!いくら三成の顔が綺麗でも、俺にそっち系の趣味はないよ!!
見る分にはバチコーイだけど、自分は無理だから!!
俺は普通に女の子が好きだから!!
誰か!!ヘルプ!!



「三成、太閣が徳川はまだかと………あぁ、これは失敬、邪魔をした。」
「うわぁあああ!?」

突如、空から降ってきた刑部に慌て三成を引き離す。
あからさまに舌打ちをした三成は、秀吉公の名前が出たお陰か俺から大人しく離れると踵を返して歩き出した。

「秀吉様がお待ちなら仕方ない。さっさとついて来い。」
「あ…あぁ。」
「……今夜は泊まっていけ。この続きは夜だ。」
「ほぉ、それはよい考えよ。よかったではないか徳川。」

明らかに確信犯な刑部の援護射撃によって、段々と外堀を埋められていく。





俺、綺麗なままで明日を迎えられる気がしない。










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