学園BASARA! | ナノ


武将ってこんなに意地汚かったっけ。


「あ、いたいた。明!」
「へ?」
「隙アリ。」


昼休み、いつものメンバーと弁当おかずの攻防戦をしていた俺は突然介入して来た声に気を取られ、その一瞬の隙に本日の力作だった唐揚げを奪われた。

「あぁ!!俺の唐揚げ!!」
「HA!!よそ見をしたアンタの負けだ。You see?」
「うっわぁー…ドヤ顔で言われると腹立つ。めっさ腹立つ。ちくしょう俺の唐揚げ…!!」
「あ、この卵焼きうま。」
「何!?佐助、某にも寄越せ!!」
「あー!!卵焼きまで!?ちょっ自分の分食えよ!!」

今度は反対側から猿飛と真田に卵焼きを奪われた。
それなりに沢山あったおかずが瞬く間に消えて行く様に涙が出そうになる。
ホント、あんたら自分で作った素晴らしい弁当があるんだかそっち食えよ。
なんで態々俺の分を奪う?
嫌がらせか?嫌がらせなのか?
グレてやるぞちくしょう…

「明日からおかずに下剤混ぜてやろうか…」
「あー!!ごめんって三上。俺様のベーコン巻きあげるからさ、物騒なこと言わないでよ。」
「ほら、ほうれん草のおひたしやるよ。感謝しな。」
「某も煮物の椎茸を…」
「旦那…それってアンタが嫌いなだけじゃん。何、三上にあげて食べるの回避しようとしてるの。ちゃんと自分で食べなさい!!」
「嫌でござる!!」
「おかーん…」

嫌がる真田の口に椎茸を無理矢理突っ込む猿飛。
親と子の様なその光景に思わず顔を呆れる。
いつもだったらここで茶々を入れる伊達が静かなことに疑問に思い、ちらりとそちらを見ると何故か顔を引きつらせていた。

「…どうしたんだ?」
「…………Ahー少し昔のことを思い出しただけだ。」

触れてくれるなとでも言うように顔を反らす伊達。
あれか、小さい頃に野菜の好き嫌いでもして片倉にさっきの真田のように無理矢理突っ込まれたか。
どんだけ似た者同士なんだよこの主従…

「あの…さ、俺のこと忘れてない?」
「へ?あ…」

気まずそうにかけられた声に間抜けな声をあげながらそちらを振り返る。
そこにはなんとも言えない顔をした慶次が頬を掻きながら苦笑いをしていた。

「……慶次先輩?どうしたんですか?」
「利からの伝言。今日は急用が出来て店休みになったから明も休み。代わりに明日入ってくれってさ。」
「分かりました、明日ですね。時間は今日と同じでいいんですよね?」
「大丈夫だと思うよ。それにしても、なんで電話に出なかったんだい?いつもならすぐに出る明が出ないって利達心配してたぜ?」
「実は携帯を家に忘れてしまって…」

まさか、そんな電話が今日に限って入るとは思ってなかった。
今日は朝からバタバタしてたもんなぁ…
主に三笠の『電子レンジ卵爆発事件』で。
一応、弁当と朝食は完成後だったから無事だったけど、台所が…ね……
悲惨なことになった台所を片付けてたら遅刻寸前になってて充電器に差してた携帯忘れちゃったんだよね。
家に帰ったら利さん達に電話しとこ。

「お手を煩わせてしまってすいません…」
「いいっていいって。明だってそんな時もあるさ。」
「おい三上。お前、コイツと知り合いなのか?」
「へ?あ、うん。バイト先の店長の甥っ子さん……で合ってますよね?」
「あれ?俺、明に利の甥っ子だって話したことあったっけ?」

………
おぃぃぃいいいい!!
え、嘘、言ってなかった!?
俺、聞いた気になってたんだけど!!
あれって前の記憶だったの!?
墓穴?これって墓穴掘っちゃった感じ?
真田と揉み合ってた猿飛からの視線が痛いんだけど!!
つか、周りからの視線が痛いんだけど!!

「…何言ってるんですか。自己紹介の時に自分で言ってたじゃないですか先輩。やだなー忘れないでくださいよ。」
「あれ、そうだったっけ?まぁいいっか。」
「そういえば、伊達達も先輩と知り合いなのか?」
「Ah?ま、そんなところだ。」
「こっちじゃ初めましてだけどねー。学年違って会うことなかったし。」
「お久しぶりでござる前田殿!!」
「お久しぶり!いやーなんかホントに懐かしい顔ぶれだねぇ。」

よっよし!!話逸らせたたぞ!!
過去の話に花を咲かせ始めた奴等に介入しないように1人黙々と箸を進める。
その間ずっと視線を感じたが俺は知らない気づかない。
絶対に反応するか…!!

とその時、最後の唐揚げが不意にひょいと横から現れた手に奪われた。
あぁ、俺の唐揚げ!!
誰だよ唐揚げ奪ってったやつは!!
ったく、どいつもコイツも人のおかず奪って行きやがっ…て……

「お、うめぇ。これアンタが作ったのか?」

ちょっちょぉぉおおおお!!
長曾我部元親!?
なんでアンタまでここにいんの!?
コイツらか?
コイツらと一緒にいるからこんなにエンカウント率が高いのか?
弁当のおかず奪われたり痛い視線貰ったり…
もうホント勘弁してよ……

「はぁ…作ったのは俺ですけど…」
「すげぇもんだな。これ、下手したら独眼竜達よりもうめぇかもしんねぇな。」
「どくが…ありがとうございます。」
「おい、テメェそれはどう言う意味だ。」
「料理さえ出来ないアンタには言われたくないよ。」

俺より下と言われたことが勘に触ったらしい。
黒い笑みを浮かべて長曾我部へにじり寄る猿飛と伊達を横目に弁当の残りを消化すべく箸を進める。
途中、真田や慶次からまたおかずを奪われたりしたがそれはもう諦めた。
もう好きなだけ持ってけ。
明日から取られること前提で多目に作って来ようかな…

「あ、ホントだ。おいしい。」
「ありがとうございます。」
「三上殿は本当に料理がお上手ですな。」
「兄貴が壊滅的だったからな。俺が頑張らないといけなかったんだ。」

他は完璧なのにな。
三笠の料理の腕にはいろいろ通り越して感動するわ。
煮物にヨーグルトを入れるとか常識的に考えてないだろ。
幼い頃に食べた三笠の料理は今じゃトラウマだよ…

「…なぁ明。お願いがあるんだけどさ。」
「なんですか?」
「お弁当さ、俺にも作ってくんない?」
「弁当…ですか?先輩、まつさんから作って貰わないんですか?」
「まつ姉ちゃんのはいつも早弁しちゃうんだよね。あはは。」
「なるほど。別に構いませんよ俺のでよければ。」
「本当かい!?」
「2つ作るのも3つ作るのも変わりませんし。明日からでいいですか?」
「宜しく!」

伝えることだけ伝えると、慶次はタイミングよく迎えに来た家康に連れられて長曾我部と教室へ帰って行った。
弁当の追加か…
明日の献立どうしようかな。



武将ってこんなに意地汚かったっけ。


(いっただっきまーす。)
(あれ?慶次、2限目に弁当食べてなかったか?)
(あ、家康!あれはまつ姉ちゃんが作ったやつだよ。そんで、これは後輩が作ったやつなんだ。)
(へぇ。うまそうだな。)
(1つ食べるか?)
(いいのか?では遠慮なく…)
(おい家康、通行の邪魔だ。)
(三成!お前も食べてみないか?うまいぞ。)
(いらん。)
(そんなこと言わないでさー。食べてみなって。)
(だからいらんと言って…もがっ!!)
(どうだ?うまいだろ?)
(………前田慶次。)
(ん?どうしたの?)
(これを作ったのは誰だ?)
(へ?明だけど…)
(!?そいつは…いや、その方は何処にいる!?)
(は?1年だよ。独眼竜達と同じクラスの子。)
(………)
(……どうした三成?)
(……なんでもない。(この味もしかして…))


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