学園BASARA! | ナノ


変わったことと変わらないこと。


「ただいまー……あれ?」

スーパーのタイムセールでおばちゃん達との死闘に勝利し、若干ボロボロになった体で玄関の扉を開けると、そこには見慣れない沢山の靴が散乱していた。



「あぁ、明。お帰りなさい。」
「ただいま。えっと、お客さん?」
「えぇ。」

俺の声を聞いてわざわざ2階から降りて来た三笠。
さりげない会話のうちに買って来たものの入ったスーパーの袋を奪われる。
どう言っても返して貰えないのは今までの経験から分かり切っているので、仕方なく一旦自室に戻って制服からジャージへと着替えると急いでキッチンへと向かった。
しかし、どうやら遅かったらしい。
野菜も魚も構わず冷蔵庫にぶちこんでいる三笠の姿に頭を抱えた。

「兄貴。」
「ん?なんですか?」
「なんですか?じゃないよ。冷蔵庫には物を取り出す時以外は触んなっていつも言ってんだろ!?大変な事になる!!」
「む、失礼ですね。料理の出来ない俺でも冷蔵庫に物を入れることは出来ますよ。」
「冷凍庫にプリン入れながら言われても説得力皆無なんですけど!?」

無理矢理三笠をキッチンから追い出し、急いでコーヒーの準備を済ませた。
慌ててて来客の人数聞かなかったけど、靴の数分あればいいよね。
いざとなれば三笠の分を回せばいいし。
あとは、茶請け…さっき買ったクッキーでいいっか。

それなりに重量あるお盆をなんの苦もなく軽々と持ち上げ三笠の部屋へ向かう。
こういう時、秀吉時代の怪力ってありがたいよな、うん。

にしても、これだけの人数って…大学のサークルかなんかの集まりか?

「兄貴、飲み物持って来たんだけど。」
「明…?ちょっと待ってください。」

慌てた様子の三笠の声に首を傾げつつ言われた通り扉の前で待つ。
数秒後、「いいですよ。」と言う三笠の声の後に自動ドアの如く勝手に開いた扉に驚きつつ中へと入った俺は、そこにいた人物達に思わず固まった。

「………どうかしたのか?」
「あ、いえ…。その、コーヒーいかがですか?」
「すまないな、いただこう。」

そう言って俺のお盆からマグカップを受け取ったヤ…じゃない。片倉小十郎。
俺が固まった理由を自分の顔のせいだと思ったのか小さく苦笑して謝られた。
いや、別に片倉の顔が怖くて固まったんじゃないよ。確かにちょっと怖いけど。
俺が固まった一番の理由はここにいるメンバーだ。

片倉小十郎に雑賀孫一、風魔小太郎。そして…大谷吉継。
見事に過去に戦国武将をしていた方々である。
…何で三笠の部屋にいんの?
風魔はまだ分かるよ。お隣さんだし。
でも他のメンバーは……え、もしかして大学で仲がいいの?
そうなんですか、三笠さん。

「三笠、こいつは?」
「こいつなんて言わないでください。この子は俺の弟の明です。」
「弟…?」

三笠の弟という言葉に四方からいぶかしむ視線が飛んでくる。
言いたいことは分かってますよ。
どうせ似てないとか思ってるんでしょ。
それは俺が一番分かってるから。
俺自身が一番理解してるから。

お願いだから何も言わないで…!!

「はじめてまして。弟の明です。言っときますが、兄貴とは正真正銘の同じ両親から生まれた血の繋がった兄弟ですよ。」
「全く似てないのだな。」
「残念なことにいいところは全て兄貴に持って行かれてしまったもので。」

本当に…全部ね……!!
あ、なんか自分で言ってて悲しくなって来た。
つか、片倉も孫一も自棄に絡んで来るな。
ホントどうしたんだ…?
というか、さっきから吉継が一言も喋っていないのが怖いんだが。
なんかありそうで怖いんだが。
俺がびびり過ぎてるだけか?
今まで豊臣時代に親密だった人達をそれとなく避けて来たから俺の本能が無意識にびびってんのか?
……ボロが出る前にここから退散しよう。うん。

「んじゃ俺、夕飯の仕度しに戻る……」

三笠達に背を向けてドアノブへと手をかけた瞬間。
後ろから急に感じた殺気。
本能的に振り返ると、ドサッという音と俺の背を守るように立った三笠の足下にそれなりに分厚い辞書が転がっていた。

「何するんですか吉継。」
「なに、少し手元が狂っただけよ。」
「見え空いた嘘をつかないでください。今、本気で明を狙いましたよね。」
「気のせいであろ。」
「貴様…!!」
「おい!!」
「落ち着け三笠。ここで暴れたら明を巻き込むことになるぞ。


孫一の言葉に殺伐とした空気が一瞬で霧散する。
居心地の悪くなったこの部屋からどうやって脱出しようかと視線をさ迷わせた。
視線が痛い。凄く痛い。
なんだろう、この前もこんな体験したことあるような気がするんだけど。
もう隠し事はするなって言う神様からのお告げなのか?そうなのか?
はっはっは…って、現実逃避している場合じゃなかった。
とりあえず、三笠ヘルプ。

「………兄貴?」
「明は夕飯の仕度に行ってください。」
「えっちょっ…」

俺の思いが通じたのかは分からないが、無理矢理部屋から締め出される。
一瞬唖然と部屋の扉を見つめてしまったが、まぁいいか。と勝手に結論付け、夕飯の仕度に取りかかるのだった。



変わったものと変わらないこと。


(あれはなんだったんだ?)
(で、どういうことですか?)
(回りくどくは言わぬ。あやつは太閣ではないのか?)
(…!?本当なのか!?)
(……根拠はあるんですか?)
(いやなに、勘よ。カン。)
(そんなものは根拠にはなりません。)
(……しかし、あやつが太閣ではないと否定はしないのだな。なるほど、ナルホド。)
(勝手に予測を立てないでください。)
((あいつ、大谷の殺気に反応してなかったか…?))
((……ん?今なんか寒気が………))


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