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漫画的展開は期待していない 後編


前回までのあらすじ。
三笠に家から閉め出されてしまった俺は、気分で行ったデパートで半兵衛にあってしまいました。
―――秀吉の姿で。



現在、毛利が座っていた席に着いて俯いたまま顔を上げようとしない半兵衛と向かい合っている俺。
口を動かすが、俺の口から出てくるのは「あー…」だの「うー…」だの言葉と言えない母音のみ。
気まずい雰囲気にどうしても一言目が紡げない。

……何なんだこの浮気がバレた夫とそれを咎める妻みたいな空気。
怒ってる。これは絶対怒ってるよ…!!
そりゃあ、生まれた姿は違うけど、こんだけでかくなるまでの間全くコンタクトを取ろうとしなかった俺が悪いのはわかる。
でもさ、俺にもいろいろと理由があるん……あれ?今思い返してみると不純な理由しかないぞ。
これじゃ、言い逃れが出来ないじゃないか。
エマージェンシーエマージェンシー、誰か助けて。


「…――ぃ?」
「ん?」

如何にお怒りから逃れるか、思考の海にどっぷり使っていた俺の耳に、蚊の鳴くような小さな声が聞こえた気がして顔を上げる。
するとそこには。

「…今まで何処にいたんだい、秀吉。」

いつも彼が怒っている時に見せる黒い笑みはなく、今にも泣き出しそうな顔をした半兵衛がいた。

「………すまん。」

そんな半兵衛の顔見て無意識に謝罪の言葉が口から溢れる。
それを聞いた半兵衛は益々顔を歪めた。
―――まるで、溢れそうになる涙を堪えるかのように。

「それは、何に対しての謝罪なんだい?」
「……」
「"前"のこと?それとも"今"、今まで僕らの前に姿を現さなかったこと?僕らが君を探していたのは……知っていたんだろう?」
「……あぁ。」

知ってる。知ってるさ。
半兵衛が、三成達がこの世に生を受けたその日から俺を探してることを。
俺は知ってて、自分の平穏のために逃げたんだから…

「すまない…だが今、半兵衛の前にいる俺は「俺」じゃないんだ。」
「……どういうことだい?」
「"今"の俺は俺だが、豊臣秀吉ではない。」
「………」

再び、顔を俯ける半兵衛。
いやな沈黙が辺りに漂う。
俺はなんとかしてその沈黙から逃げようと、辺りに視線をさ迷わせた後、すでに冷えきってしまったコーヒーに口を付けた。



「……確認なんだけど、君は豊臣秀吉と言う名ではないけれど、"今"ここにはいるんだね?
「あぁ。」
「それは、姿も違うのかい?」
「あぁ。」
「ちなみに、僕らの近くにいたりするのかな?例えば…――学校の生徒として。」
「あぁ……え?」

あれ?今、なんかすごい不味いこと口走らなかったか俺…?

「ふーん。そうなんだ。―――いるんだ、あの中に。」

は め ら れ た !!
気がついた時には時すでに遅し。
いつもの真っ黒な笑みを浮かべた半兵衛の姿に思わず顔がひきつった。

「ふーん、あの中にいるんだ。へー。」
「いや、その、」
「必ず見つけ出すから、その時は…………覚悟しておくんだね。」
恐怖で真っ青になる俺を見て「ふふふ…」と妖しい笑いを残して去って行った半兵衛に俺は、自分の中に立った死亡フラグに絶望するのだった。

漫画的展開は期待してない 後編

(ピピピピ)
(……はい、もしもし。)
(あ、明ですか?みなさんそろそろ帰られるそうなので、7時頃に帰って来てください。)
(………三笠…どうしよう。)
(はい?)
(俺、半兵衛に見つかったら殺される…!!)
(は?)



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