オクラ子孫の日輪月歩 | ナノ

その肆


毛利軍の襲撃報告を受け、まさに鬼のような形相になった長曾我部は俺に危険だから部屋から出るなと言い残して飛び出して行ってしまった。
・・・・・・別に俺はひ弱ではないんだが。
まぁ、これは長曾我部軍と毛利軍の戦いであって部外者な俺が口を出すのは野暮と言うものだ。
そう判断して外の騒音はシャットアウトして部屋にあった箪笥を漁る事にした。
え?緊張感がない?
これでも最低限の警戒はしているので問題ない。

それにしても長曾我部と言ったら紫じゃなかったのか鶫。
何故この部屋の箪笥には緑とか黄緑とか若草色とかこう誰かを彷彿させる緑系の色の着物しかないんだ。
ここアイツの部屋じゃなかったのか?
アイツ俺の部屋って言ってたよな。わざとなのか?
俺が毛利元就似だから緑が好きと勘違いしてあえてこの色でそろえたのか?
俺は黒の方が好きだ。

「しゃーねぇ。後で別のに変えてもらうしかな・・・・・・」
「動くな!!」
「―――っ!?」

仕方なしに一番暗い色の着物に袖を通していると、勢いよく蹴破られた扉とともに緑色の軍勢が侵入してきた。
発言からして敵だと分かる相手に着かけていた着物を脱ぎ捨て壁に立掛けてあった刀を掴む。
距離を取るために後ろに跳び退り相手を睨み付けると驚いた顔のおっさん方と目が合った。
・・・・・・なーんかデジャヴ。

「もっ元就様!?どうしてこのような場所に!?」

どうしてここの奴らは人の顔を見るたびに元就元就とオクラの名前を連呼するんだ。
似てて悪かったな俺は智就だ馬鹿野郎。

あー、なんかそう考えると段々腹立ってきた。
無意識に舌打ちををすると前に今だ混乱状態で動けずにいるおっさん達が青ざめて後ずさる。
そのおっさんの行動がさらに俺の神経を逆撫でた。

「・・・・・・何このようなところで呆けておる。さっさと他所へ行かぬか。」
「もっ申し訳ありません!!」

悲鳴に近い情けない声を上げながら素早く去って行くおっさん達を冷めた目で見送ると俺は脱ぎ捨てた着物を素早く羽織り刀を持って部屋を飛び出した。
さっきの言葉訂正。俺にも関係大有りだ。
とりあえず、毛利元就を見つけたら一発殴る。



部屋を出た俺は甲板目指した。
何故かって?ボス戦は広いところが基本だろ。
まぁこれも鶫の受け売りだが。

俺を見るたびに襲い掛かって来る長曾我部軍に怒鳴り散らし、平伏す毛利軍を蹴り飛ばす。
そして甲板へたどり着いた先で最初に目に入ったのは俺が今一番見たくなかったオクラ・・・ではなく毛利元就の後姿だった。

俺的にはとてもありがたいその位置。
じゃあ相手をしてた筈の長曾我部は?と辺りを見回すと、前方でボロボロになりながら目を見開く長曾我部と目が合った。
何故ここにと目で語る長曾我部と今だ気づかない毛利にニヤリと自分でも分かる悪い笑みを浮かべると、もっていた刀を手に駆け出した。

「智就!?」
「―――っ!?」

振り下ろした刀は長曾我部の声で振り向いた毛利に受け止められてしまった。
そのことに舌打ちをしたくなったが、驚きに目を見開く毛利を見れたのでよしとしよう。
このままでいるわけにもいかないので素早く弾き距離を取る。

「おい長曾我部、なんでバラすんだよ。奇襲失敗したじゃねーか。」
「わっわりぃ・・・・・・じゃなくて!!なんでここにいんだよ!!じっとしとけって言っただろ!!」
「じっとしてたら部屋襲撃されて移動せざるを得なくなったから。」
「奇襲って・・・大丈夫だったのか?」
「無事だからここにいるんだが。つか、どう見ても俺よりアンタの方が重傷だろ。」

呆れた様に言いながらボロボロな長曾我部近づくと、傷の軽そうな右腕を掴んで引っ張り起こす。
傷の痛みに一瞬顔を歪めるもしっかりと立っているところを見るとまだ大丈夫だろう。と勝手に検討させて貰い、敵意剥き出しの毛利へと再び刀を構える。

「……貴様何者ぞ。」
「フン、貴様には関係のないことよ。」
「いや、関係大有りだろ。」
「長曾我部は口を挟むな。」

わざと毛利風に返したら的確なツッコミを長曾我部が入れて来てちょっとイラッとしたので傷口を軽く叩いてみる。
すると、よほど痛かったのか情けない悲鳴を上げてのたうち回るその姿が面白かったので軽く鼻で笑っておいた。

「…ってめぇ!!」
「空気を読まないアンタが悪い。」
「そういうところは毛利にそっくりだよな…!!」
「え?何だもう一発食らいたいのか?」
「いるか馬鹿野郎!!」
「……このような事態、我は計算しておらぬぞ。」
「出来るわけねぇって。だってこいつは……ごふっ!!」
「長曾我部、お前いい加減少し黙ってろ。話が進まん。」

今度は手加減なしの華麗な蹴りを腹へとお見舞いする。
呆気なく地へ沈んだ長曾我部を引きずり安全な場所へと移動させ、改めて相手と向き合うと刀を構えた。

「さて、煩いやつも沈んだし、そろそろ本気で行くか。」
「………何をする気だ貴様。」
「自分の頭で考えてみるがいい。

――――毛利智就いざ参る。」





[ 戻る ]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -