オクラ子孫の日輪月歩 | ナノ

その壱


キーンコーンカーンコーン

今日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。
さっさと帰るために鞄へ荷物を詰めていた俺は後ろからいきなり来た衝撃に思わず眉を顰める。

「ナリ様ー!!一緒に帰りましょ!!」
「暑い。重い。苦しい。離せ。あと、俺の名前は智就だ。」

力を加減することなく抱きついている鶇の頭を叩く。
ぎゃいんと女としてはどうなのかと思う声を上げながら俺から離れた鶇はものすごく残念そうな顔をこちらに向けて来た。

「もうっなんで智就は一人称が俺なの!!そこまで顔も声も似てて、おまけに子孫なのになんで俺なの!?」
「知らん。一応訂正しとくが、子孫は子孫でもオクラのではない。」
「あ、もう一回知らんって言って。ナリ様の影を見た。」

俺の話も聞かずうっとりとした顔をする鶇を思わずかわいそうなものを見る目で見てしまう。

この馬鹿(と書いて鶇と読む)が先ほどから連呼しているナリ様とは戦国武将たちをスタイリッシュでアクションに戦わせるゲームに登場してくる毛利元就というキャラクターのことで何でも顔が俺にそっくりらしい。
……いや、そっくりだった。似てるとか言うレベルじゃないくらい同じ顔だった。ついでに声も。
鶇の家に連行されてゲームを見せられた時は声が出なくらいに驚いた。
ゲーム自体は面白いしストレス発散になるから好きだが、同時にゲームのとき隣にいる鶇の腐った話を聞かされるわけで。そこがちょっと、というかかなりウザい。

「じゃ、俺は1人で帰るから。」
「ちょっ待ってよー!!ケチ!!もう、智就なんて元親にナリ様と間違えられて襲われちゃえばいいんだ!!」

意味不明なことを言う鶇を無視して教室の扉を素早く閉める。


「ったく誰が男に襲われるかよ。てか、あれは全員二次元だろーが。」
「っ毛利!?」
「あ゛あ!?」

半ば逆切れ気味になりながら呼ばれた方へと振り返る。
振り返った先にいたのは廊下で俺を呼んだ学生……ではなく、何故か変な格好をしたオッサンがいた。しかも木製の部屋。
全員がこちらを見て驚きの表情で固まっている。

「……どこだここは。」
「もっ毛利!!てめぇいつの間に!!」
「誰か!!アニキ呼んで来い!!」
「部下も付けず一人で来るたぁ随分余裕だな!!」

ピリピリとした空気をまとい一人また一人と立ち上がる。
その手には刃物が握られていた。

「おい、それ銃刀法違反じゃ…」
「死ねぇ!!」
「っ!!」

勢いよく襲いかかって来た一人を屈んでかわし、その腹へと拳を叩き込む。
崩れ落ちたそれが合図となり一斉に襲いかかって来た男達をかわし、時には避けている途中で拾った刀(鞘付き)で防ぎながら潰していく。
しかしこの男達は一体何処から沸いて出てくるのか。倒しても倒してもなかなか数が減る気配がない。
しかも何故かみんなして親の敵を見ているような顔で迫ってくるのだ。
だが、俺の記憶が正しければこのオッサンたちとは初対面なはずだが。
…もしかして誰かと間違われているんじゃ……いや、ないな。
ものすごく似ている人が一人居るがあれはゲームの中のキャラクターだ。
脳裏を過ぎった人物を頭を振ってかき消す。

不意に襲い掛かってくる男達の中に他とは比べ物にならないくらい大きな殺気を感じ、本能的にその場から飛び退る。
その1コンマ遅れて飛んできた何か。
炎をまとったそれを目にし、思わず固まった。

「……碇?」
「毛利…てめぇ一人で来るたぁいい度胸じゃねぇか。」

地を這う様なその声に恐る恐る振り返る。
振り返ったその先にいたのは全体的に紫色の着物を羽織、銀色の髪に左目を隠す眼帯。
先ほど鶇がいっていた……




「長曾我部元親…」

まさにその人だった。

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