オクラ子孫の日輪月歩 | ナノ

その拾漆


「今、毛利は大阪にいる。」前田のその言葉を聞いた俺は直ぐ様城を飛び出そうとした。
だってどう急いで今からここを出発しても安芸行って大阪へ行くのは間に合わないから今月の満月も仕方なく捨てて、資源を十分に集めてからにしようと計画していたものが一気に短縮するかもしれないんだぞ?
こんなチャンスを逃すわけにはいかねぇだろ。
この期を逃したらホントに次になる。
そう思って上田から出ようとしたのだが、何故か大阪行きはその情報を持って来た前田に止められた。
血縁で争うことほど悲しいものはない。仲直りしろと言われて。



「…………」
「……おい、いい加減機嫌直せよ。」
「うっせぇ乳首。」
「乳首関係ねぇよ!!……確かに風来坊の言っていることはお前にとっちゃありがた迷惑かもしんねぇが、俺も悪いことじゃねぇと思うぜ。あいつ地味に落ち込んでたしよ。」

アイツが?落ち込む?
…ナイナイ。
寧ろ、思いっきり鼻で笑ってそうじゃねーか。

でも、何かしらしないとここから出られないわけで。
出入口は前田の話しに共感した真田に閉鎖されちまったし…どうやったらアイツらの目を盗んでここから出られるのか……

「いっそ夜襲かけて城を潰すか…?」
「待て待て待て。戦になりそうな問題を起こそうとするな!!お前が言うと洒落になんねぇ。」
「俺がいつ冗談だと言った?やると言ったからには殺るに決まっているだろう。」
「なお悪いわ!!つかよ、前から気になっていたんだが、どうしてそこまでアイツが嫌いなんだ?顔が似てるってだけじゃねぇんだろ?」
「……」
「おい智就、何でそこで黙るんだよ。……まさか。」
「っ、そうだよ。そんだけだよ!!」

文句あんのか!!
俺の顔が似てるってだけで腐女子からは何処に行ってもコソコソと噂され、鶇にはイベントの度に拉致られる。
そんなんが5年以上続いたら嫌いにもなるわ!!

「……っておい元親、なんだその目は。」
「いや、今まで忘れてたがお前ってまだ17だったな。初めて年相応の反応をみたk……」
「焼け焦げよ!!」
「ギャー!?」

いつもの如く元親を焼く。
しかし、今日の元親はいつも以上にタフだったようで直ぐにむくりと起き上がった。

「お前なぁ…」
「黙れ。」
「自分が悪いってことはわかってんだろ?」
「………」
「毛利はよ、いつもああいう態度だが本当は結構繊細なんだぜ?特に血縁関係のことは。お前も知ってんだろ?」
「………」
「お前がなんで毛利が嫌いなのかは分かった。理由は…まぁ、あれだけどよ。だが、知っているのは俺だけでアイツは知らねぇ。」
「………」
「理由も言わずにただ頭ごなしに嫌いって言うのはあれなんじゃないか?」
「………んだ。」
「は?」
「じゃあどうすればいいんだよ!!理由を言えばいいのか?理由を言えば嫌ってもいいのか?違うだろ!!俺だってこれがあの人に失礼なことだって分かってんだ!!だけどな向こうでは俺よりあの人の方が世間に知れているから俺が似てるって言われるんだ!!何処に行っても毛利元就に似ている。俺を…毛利智就を見てくれるやつはいないんだ!!」

今まで溜めていたものが一気に溢れ出てしまう。
ずっと言う気なんてなかったのに。
言いたくなかったのに。
目の前でポカンとする元親が可笑しくて笑いが込み上げて来る。

「……智就。」
「なんだよ。」
「他の誰がお前のことをなんと言おうがお前が毛利智就だって俺は知っている。だから……泣くな。」

ぐしゃりと頭を撫でられた自分の頬を伝う涙に気づき、泣いてしまった悔しさに唇を噛む。
それでも何も言わず撫で続ける元親を殴ることは出来なかった。



「……元親、明日ここを発つぞ。」
「おう。」


[ 戻る ]

「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -