学バサ主が俺日秀吉様の所にトリップしちゃったらA


過去の俺…いや、秀吉様に案内された場所は彼の部屋だった。
懐かしいなぁ。
確か彼処の障子の縁、慶次が激しく扱い過ぎてヒビ入ってたんだっけ。
物思いに更けながら辺りを見回す。
向かい側に座る俺はそんな俺を見ながら三成が持ってきたお茶を飲んでいた。

一応、形式的なものがあるから俺の前にも同じものが置かれてはいるが手は付けていない。
いや、付ける気になれない。
別に毒が入ってるのを警戒いるわけではないんだが(三成が毒殺なんて卑怯な手を使えるわけがない)…なんか別のものが入ってそうで恐くてさ……
三成の怨念とか吉継の不幸とか怨念とか怨念とか。
とりあえず、毒以外のものが入っている気がして飲む気になれないのだ。

「……そろそろ気は済んだか?本題に入りたいんだが。」
「それは構いんですけど……」

そう言いながら周囲へと視線を向ける。
先程から俺に刺さる無数の視線。
出所は主に隣の部屋と廊下と天井裏。
それが誰だかなんて分かり切ってはいるがこうも分かりやすく送られて来たんじゃいろいろ辛くて堪らない。主に精神的に。
助けてと言う意味を込めて視線を送るとその視線の意味に気づいている秀吉様は小さく息を吐いた。

「お前ら…俺は下がれと言ったはずだが?」
「っしかし、それでもし秀吉様に何かあったら…!!」
「それは大丈夫だとさっき言っただろ。」
「僕も三成君の意見に賛成だよ。こんな得体の知れない人間と2人きりだなんて何を考えているんだい?」

得体の知れないって…酷い言い種だな。
不満をぶつける2人のことを観察しながら辺りの気配を探るとまだ近くに潜む気配3つほどがあった。
大方、吉継と家康と三笠だろうな。

というか、この言い争いはいつ終わるのだろうか。
今のところはどうにかこうにかかわしているが、どうせ秀吉様が負けるのは目に見えているので出来ればさっさと話を進めて欲しい。(何故分かるかって?経験者は語るとだけ言っておこう。)
もういろいろと諦めた。

「あの、聞いてもらっても構わないので話を進めませんか…?」
「貴様…秀吉様が貴様を庇っておられるのにその言い種はなんだ!!聞かれたくないことならばそう貫き通せ!!」

いつもの俺だったら「じゃあどうしろと。」と呆れていただろう。
しかし、俺も精神的に参っていたみたいだ。
三成のその一言に俺の中の何かが切れる音がした。
堪忍袋の尾的な何かが。

「……じゃあ、どうすればいいんですか。」
「何…?」
「だから、それじゃ俺は何と答えれば貴方の納得が行くのでしょうか。確かに、さっきの俺の発言は秀吉様が態々庇ってくださっていたのに少々偉そうだったかもしれません。そこは謝罪します。で、俺はどうすればいいんですか?否定したらますます疑われ、肯定してら自分の意識はどうしたのかと叱られる。なら曖昧に返事しとけばいいんですか?違いますよね?貴方、そういうのが一番嫌いなタイプですよね。なら一方的に意見をぶつけるのではなく、こっちの意見も聞いてみたらどうなんですか?何かいい案が出るかもしれませんよ。そうだよ。話し合えばいいんだ。と、言うことで話し合いましょう。俺の話も聞いてみましょう。つか聞け。」
「あ…あぁ……」
「やれ三成、ぬしというやつは…」
「はっはっは。お前の負けだな三成。」
「……半兵衛、お前もだ。いいな?」
「そうだね…」

笑いながら襖を開けてやって来た家康と吉継、そして半兵衛の声にはっと我に返る。
……俺は今、何をした…?

「……っ!………!!」
「この際だ。三笠も出て来い。どうせバレてんだ。」
「……はい。」



「と、言うことでだ。改めて、先程は俺の部下が悪かったな。」
「あ、いや、そのことはもういいんで…!!」

仕切り直し改めて秀吉様と向かい合う様に座る。
先程と違うのは圧倒的に人口密度が増えたところだろうか。
みな一様に此方をじっと観察するように見る視線が何とも居心地悪い。
まぁ、さっきよりはマシになったけど。
……ホント、なんてことしてんだろ俺。

「挨拶が遅れたが、俺は豊臣秀吉だ。」
「三上明です。先程は本当にすみませんでした!!」
「こちらこそすまなかったな。それにしても…三上明、か。」

懐かしそうに名を呟く秀吉様に何とも言えなくなる。
だって…ねぇ?
一応秀吉様っては言ってるけど、この人一つ前の俺だもんなぁ。
向こうからしてみれば違うんだろうけど。
………あれ?
となると、この秀吉様から見ると俺はどういう風に見られているんだ…?

「で、結局君は何者なんだい?」
「約500年近い未来から来た人間です。信じて貰えるとは全く思っていませんが、これが俺の間違うことなき真実です。」
「未来だと…?」
「ついでに言うと秀吉様の子孫でもあります。ものっすごく薄いけど。」

その言葉に数人の人物が小さく反応した。
顔には全然似てないって書かれているが、気にしない。
子孫ってだけでその人に似るなんて普通はないんだからな。
むしろ、似てる方が凄いんだからな…!!

「証拠はあるのか?」
「物的なものはないですね。俺の家、分家の端くれなんで。」
「物はってことは他のならあると?」
「婆裟羅が同じじゃ駄目ですか?それ以外だとあとはDNA鑑定しかないんですけど…」
「でぃえ…?」
「とりあえず、お前の身元は大体理解した。で、これからお前はどうするんだ?」

そうなんだよ。
そこが問題なんだよなぁ…
ここにお世話になるよう頼むのが一番なんだけどここ豊臣だしなぁ…
いるだけならここがいいんだけど、俺がいつまでボロを出さずにいられるか。
……3日も持たないな。うん。

「行く宛がないならここに泊まるか?」
「そしたいのは山々ですが…」
「貴様…秀吉様の親切を断るつもりか…!!」
「わー!!三成落ち着け!!」
「先程と全く変わっておらぬぞ。落ち着けオチツケ。」

羽交い締めにして三成を抑える家康と吉継の手慣れた手腕に他人事の様に関心する。
その横で大人組は優雅にお茶を飲んでいた。

「……すいません、やっぱり少しの間だけお世話になってもよろしいでしょうか。」
「……すまん。今案内をさせるからま…」

秀吉様から促され立ち上がったその瞬間。
先程まであった畳の感触が消えたことに違和感を感じ下を見ると、さっきまであった畳の代わりに真っ黒い空間が広がっていた。
………ま さ か 。

「ぎゃぁぁああああ!!」

再びの浮遊間。
誰かの手が一瞬俺に触れたが掴むことは叶わず、俺はそのまま黒い空間に吸い込まれて行った。



「いでっ!!」

どすんと言う音と体に走った衝撃によって自分が何処かに落とされたことに気がつき、辺りを見回す。
そこは、見慣れた自分家の廊下であった。

「…戻って…来たのか…?」

慌てて近くに転がっていた鞄から携帯を取りだし確認してみると、5分くらいしか進んでいなかった。
……一つだけ、一つだけ言ってもいいだろうか。


俺は何をしに彼処へ行ったんだ?

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