風が舞う桜散る


喧騒、悲鳴、怒号。
様々な音が飛び交う戦場を武器を手に駆ける。

「死ねぇ!!」
「甘いッ!!」

刀から伝わる肉を切る感触。
迫る敵を容赦なく切り捨て刀に付いた血を振り払う。

もう数え切れないほど体験した戦。
昔は人を切るたびに震えていた手も湧き上がってきていた嘔吐感も今では感じなくなってしまった自分に嫌気がさす。
一人、また一人と俺に襲い掛かって来る兵士を切り伏せながら舌打ちを打つ。
気づけば俺の後ろには切った兵によって屍の道が出来ていた。

「・・・・・・俺は何がしたいんだろうな。」
「―――っ!避けてください!!」

その声に体が反応するよりも先に俺の背後に突如現れた影。
振り返った先にいたのは赤と銀、二人の忍。
交わる二つの刃からは火花が散っていた。

「三笠!!」
「何ボーっとしているんですか!!ここは―――っ!!」
「・・・・・・・・・」

風魔から放たれた風が刃となって三笠に迫る。
三笠は、それを自らが生み出した風で壁を作り粉砕すると、お返しとばかりに同じ技を風魔へと叩きつけた。

「――っ!!」
「貴方だけが風の悪魔ではないんですよ?」
「三笠。」
「ここは俺が引き受けます。秀吉は先に行ってください。」
「分かった。・・・・・・死ぬなよ。」
「俺は貴方の側以外で死ぬ気はありませんよ。」

風魔の元へ駆けて行った三笠を見送り、再び走り出す。

それからさほど時間もかからずたどり着いた栄光門。
硬く閉ざされたその扉を見上げ、手に持っていた刀を鞘へと戻す。

「行けるか?――――はっ!!」

光を帯びた拳を扉へと叩きつける。
ドゴォと言う音を立てて吹っ飛んだ栄光門はその奥にあった扉までも巻き込んでその役目を終えた。
一直線になった道を進むと最奥に老人が腰を抜かして座り込んでいた。

「北条氏政・・・・・・」
「ひっひぃぃいいいい豊臣が来たぁぁああああ!!」

後ずさる北条へ素早く近づき、その首元へ抜いた刀を突きつける。
小さく悲鳴を上げ震える北条の目は右へ左へと忙しなく泳いでいた。

「俺がここに来た理由・・・・・・分かっているな?」
「お主が言いたいことはわかっとる!!ぢゃが仕方がなかったんぢゃ!!ここを、この小田原を守るためには!!」


この戦の発端は北条が豊臣に向けて戦の準備をしていると言う三笠の情報からだった。
初めは「あの北条が戦?おかしいなぁ」と思ってたけど詳しく調べてみるとその後ろで北条を脅している黒幕がいることが判明した訳でして。松永とか織田とか松永とか。
これ何かのフラグな気がしてならないんですけど。気のせいですか?

いくら停戦やら同盟の申し出の文を送っても聞き入れてもらえないので強硬手段を取らせてもらいました。
いつでも奇襲掛けられてもいいように一応準備しといてよかった。
進軍から何やらにそう時間がかからなくて。


「覚悟は出来ているな?」
「・・・・・・っ」

悔しそうに顔を歪める北条。
そんな彼の表情に小さく息を吐き、その首下にあった刀を離すと鞘へ戻す。

「・・・・・・な、なんぢゃ?」
「今から北条は豊臣に下ってもらう。」
「わしを殺さないのか・・・?」
「初めから巻き込まれただけのあんたを殺す気はない。・・・・・・本当は戦をする気もなかったんだがな。」
「う゛・・・あんな大群で来られたら抵抗するに決まっておるぢゃろうが!!」

あれでも少ない方だったんだけどなぁ・・・
いつもならあれの倍くらいプラス半兵衛達いるし、なんて言うかもう・・・ねぇ・・・・・・?
戦する気はないよ!ってアピールするために今回は三笠と二人で来てみたんだが、意味はなかったようだ。
まぁ、保険のために鎧着てたら戦します!って勘違いされても仕方ないか。特に精神的に追い詰められて来ている人ほど。

「兎に角、北条は豊臣に下る。いいな。」
「わしに決定権はないのぢゃろうに・・・・・・」




こうしてこの戦は北条の降伏により豊臣の勝利で終わったのだった。






Back

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -