これくらい、やったっていいだろ?
「おいほくろ」 「なんスか?」 「水」 「っちょ、…はいっ!ただいまっ!」
俺がひと睨みをすればほくろはもうダッシュで水をとりにいく。 そんな俺たちのやりとりを見ていた小牟田が盛大な舌打ちをして俺の事を睨んできた。 はっ。べつに、これくらいいいじゃねえか。 あいつは、お前のもんなんだしよ。 俺なんかに、あいつが、振り向くはずがねえ。
だから、あいつのことをこきつかってやる。 お前がさんざん甘えさせてやってんだろ? それだったら俺はあいつを、こき使ってやる。誰が優しくなんかするか。
「おいあほ」 「ああ?お前誰に言ってんだよ」 「お前だよお前」 「死ね小牟田」 「うるせえよあほ。お前、雄歩に近づくな」 「お前には関係ない」
とうとう小牟田が俺にあいつに近づくな、と言ってきた。 独占欲をむき出しにして俺につっかかってくるなんて。 必死だな、こいつ。
「関係ある。雄歩は、俺のものだ」 「どうして俺がお前に指図をされないかんのだ」 「俺のほうがかっこいいから」 「死ね小牟田」 「お前が死ね藤代」 「死ね」 「死ね」
あーやっぱ小牟田はムカつく。 こんなムカつく奴のどこがいいんだあいつは。 絶対に俺のほうがいいに決まっている。
「水持ってきたぞー」 「ほくろ」 「なんスか?」 「やっぱ俺にしとけ」
隣で小牟田がキレて俺に殴りかかってくるのを目の端でとらえたが、俺はただ真っ直ぐにほくろを見ていた。
ああ、やっぱり、こいつを、俺のものにしたい。
ゆつるさんへ捧げます (090807)
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