気づけよバカ





気がつくと鐘は俺の隣にいる。クラスが違うのに放課になると必ず俺の座っている席の隣にいるのだ。うん、まあ、別に文句とかはないんだけどさ、こう、女子の視線が気になる年頃なのよ。わかるかな?
鐘は俺なんかと違ってかっこいいから当然校内の女子が放っておくはずもなく、鐘の周りにはいつでも女子が群がっている。最初こそ驚いていたが今では慣れてしまってああ、また囲まれているよ、程度にしか思わなくなった。慣れは、恐ろしい。
そんな鐘がどうして俺のクラスに、わざわざ来てどうして俺の隣にいるのかは分からない。さっきから無言でじーっと俺のことを見てくる。当然、居心地が悪い。こういうときは、どうしたらいいのだろうか。クラスの友人も遠くでことの成り行きを見守っているだけで助けようとはしない。この、裏切りものめが!


「あ、鐘?」
「……、あ、なに?」
「いや、あの、どうして何も言わないで俺のこと見てるわけ?」
「…ああ、そんなこと?」
「そんなことって……」


鐘はにかっと笑い、俺の質問に答えた。
鐘が笑った瞬間クラスの女子が悲鳴をあげたのは気にしないでおこう。


「雄歩の可愛い顔を眺めてるだけ」
「……はあ?」
「充電だよ。だってまた授業が始まって雄歩に会えなくなるだろ?」
「え、な、なんで?」
「可愛いなー」


鐘は言いたい事を言ってくしゃっと俺の髪をなで、教室から出て行った。
いや。っちょ、可愛いって、なんだよ。
俺の疑問は増えていくばかりでなんの解決にもならなかった。
可愛いって、ふつう女子に言う言葉じゃないのか?








三ツ矢さんへ捧げます

(090706)




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -