ボールを持った男性が駆け寄ってきた。


「大丈夫だったか!?」
「や、全然大丈夫です。…サーブですか?」
「え?あぁ…うん、サーブ」
「やっぱり男性が打つと違いますね」
「流れ玉になるとは思わなくて…本当すまん!」
「気にしないでください」


話によるとレシーブが乱れたそうな。良くあることだ。
目の前にいる短髪黒髪の男性のユニフォームには1番が刻まれていた。
主将かぁ、かっこいい。中学生の1番と高校生の1番は違うなぁ、身長も存在も大きい。
頬を伝う僅かな汗が光を反射する。
あぁ、汗が光るってこんな感じのことを言うんだろうなぁ。


「…ちょっと、何邪魔してんのサ」
「月島!…てか邪魔してないんだけど」
「してるデショ」


すいません、なんて頭を下げている。何で私が悪いみたいになってるんだ、勘違いもいい加減にしろ!
向こうの方から大地ー、と呼ぶ声が聞こえると彼はもう一度だけ会釈しそちらへと戻っていった。
私とはどれくらい違っただろうか?
私もあと1ミリ、1ミリあれば170センチになるというのに…!
女子としては平均の上になる身長も、憧れのように伸びることを未だ望んでいる。
そして伸びることを信じている。だってあと1ミリだよ?これで身体測定で伸びてなかったら泣き崩れる。さすがにそれはないか。
横で一つ溜息をつかれたかと思うと月島は踵を返し自分の席へと足を向けていた。


「そういえば取り巻き達はどうしたの」
「キミには関係ない」
「あーはいはいソウデスカー」


本当腹立つなこいつ月島。明日身長縮んでろ。自分より幾分も大きい背中に思い切り舌を出す。
入学してから犬を除けば誰よりもこいつと話をしてるけど、誰よりも心の距離は遠い。多分。





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