「部活動紹介の前に10分休憩を挟みます。14:25に現在の席に着席してください、2,3年生で部活動紹介を行う人は一度ステージ前に集合してください」


生徒会で司会を務める人がアナウンスを終えたと同時に体育館から生気が戻ってくる。
皆どれだれ眠かったんだよ、と心で突っ込むも自分も眠たく人のことは言えない。
一つ欠伸をすると真横の月島によくこんな所で欠伸出来るよねなんて貶された。ぬかせ。
オリエンテーションなんて横文字を並べていても内容は所謂顔合わせや学校紹介を兼ねたもので大したものでは無かった。
月島に文句の一つでも言い返そうと口を開くもそれは叶わなかった。


「ねぇ、名前なんていうの?」
「ちょっと私が先だったのに!」
「背高いね、何センチ?」


女子だ。女子の声。女子の群れ。
わっと月島を囲う様に集まってきていた。
嫌な顔をする月島をにやにやと眺める暇もなさそうだ、圧死しそう…。
この人達私のこと見えてないなこれ。
そっと席を離れたものの、たった数日で休み時間にペラペラと喋ることが出来る人が出来る程のコミュニケーション能力を私は持ち合わせていなかったようだ。このままだと三年間一人になってしまわないかと少しの不安に襲われる。
5組になったあの友人は楽しそうに谷地さんってお友達が出来たの、と話してくれた。
中学ではあまり私以外の人に懐かなかった彼女が自分の話をしてくれるのは嬉しくもあるが少し寂しくもある。

そのままぼうっと入口に向かって歩き続けた。
外の空気が入り込み、肌が少し冷える。
もう少しだけ暖かくならないかな、そうしたら心地良く感じるのに。


「危ない!」


何だ、どうした。声の方を見やる。
その声はどうやら私に向けられたものらしく、ぎゅんという効果音が合うだろうか、勢いよくボールと思われるものがこちらへと飛んできている。
何をしたらこんなスピードで飛ぶんだろ。強い。
近付いてきているボールは不思議と私の目にはゆっくりと映っていた。

あれは、バレーボールだと思う。

そう判断したと同時に脳裏には中学で入部し活動していた、女子バレー部が浮かんだ。
これが試合なら、どう反応するべき?

―――次の瞬間には、自らの手に触れたボールが山なりを描き落下していた。

床へと落ちるかと思われたボールは男性の手の内にある。
少しの間の静寂。手に残る少し柔らかいボールの感覚。


「…うん。」


懐かしさに、恐怖など微塵も感じず、口角が上がった。
遠くで月島と犬が驚いた様に立ち尽くしているのが見えた気がした。





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