奇声を発しそうなくらい眠い。これだから早起きは嫌いだ。


「おー、梵きた。今日もギリギリだね、あんたが最後だよ」
「おは。もー本当朝早いの苦痛だわ…」


今日は校外学習。何か聞き覚えもないところに行って、飯盒炊爨して、これといったお土産も置いてないお土産屋さんくらいしかない敷地でグループ行動をして学校まで戻って終わりだ。なんて刺激がないんだろう。これを言ったら岡コンビに冷めてるねって言われた。私が冷めてるんじゃなくて学校のショボさが酷いだけだ。


「つーか梵さぁ、あんた服に無頓着すぎない?女子高生がティーシャツにジーパンって…」
「岡村が気合い入れすぎなんだよ」
「他のクラスの男子にアピールするチャンスじゃん?」
「色ボケ…」


大真面目な顔をして答える岡村に、岡本がいるじゃんと言おうとして飲み込んだ。周りからみたら熟年夫婦と囃し立てる対象であるのは事実だし、この一ヶ月であたしと月島も少しづつそんな風に呼ばれ始めた…が、言われていい気はしないのが現実。というか、私が月島と…いや、誰でも変わりはしないけど。誰かとそういった関係にある自分が想像できなくて、鳥肌が立つ。
岡村はそんなんじゃないと思うけど、きっと岡本のこと恋愛対象で見てないし同じ気持ちになるだろうな。朝から下手にでかい声を出されちゃ頭に響くし、そっと心にしまっておこう。


「いや、梵が色気なさすぎるだけデショ」
「月島…あんたいい日陰だね。そして私に色気など求めるな、元からない」
「そうだね。その服じゃそうだろうね」
「ドーモ。逆にみんな考えないのかね、着飾って服にカレーでもはねたらどうするんだろ。あたしはそんな心配をせずにカレー食べたいから」


色気より食い気かよ、と笑われたけど気にしない。最初からなんにもない場所に期待なんてしてなかったし、かといって楽しみがなければつまらないし時間の無駄。
飯盒炊爨の楽しみって各班の味が少しずつ違う所だと思う。家とは違って、班ごとに違う味。考えるだけで涎でそう。勿論クラスの全班つまむくらいの気持ちでいる。

岡コンビの班のも、山口の班のも食べに行くから失敗しないでね。そういうと何を仕込んでやろうかな、と笑いに包まれた。おいやめろ。料理を粗末にするんじゃない。


「色気より食い気の梵さん。新発売のお菓子買ってきたからバスん中で食べようよ」
「気持ちは有難いけど移動中寝ないと持たないわ…そのために一人席選んだんだし」
「隣にしようって言ったのに断りやがった理由はそれか」
「だってうちのクラス女子奇数で余るじゃん。寝る絶好のチャンスだと思ったね」


君たちに伝えてなかったことがある。
それは私の優先順位。
色気より食い気、そういうのであれば。

食い気より眠気。そういうことや。





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