「日直も全員回ったから席替えするぞー」


それは今日もまた唐突だった。担任の一言であちらこちらからわっと声が上がる。折角話せるようになった友達と席がバラバラになることが大半を占めるざわめきに担任は態とらしく両耳を塞いだ。

私は今猛烈に嬉しい。

何故なら目の前の悪魔とやっと離れられるからだ。もう身近で悪魔のことを気にする必要が無くなるのだ、入学以来の悩みは解決した。今後私には素晴らしいハイスクールライフが待っているに違いない!頬が緩むのが自分でもわかる。この開放感はテスト終わりに等しい。こやつの小言や態度を気にすることなく過ごせることに、今回ばかりは担任に感謝した。担任大好き!


「やっとキミと離れられるよ」
「同じこと思ってた。シンクロは初めてだね」


最後の最後まで嫌味な奴だ。

担任曰くさっき配ったプリントの裏面の右下を見ろとのこと。ファイルにしまったそれを取り出すと小さく番号がふってあることが確認できた。自分の番号を今の出席番号に見立て、その番号の席の人が座っている席に移動することになるわけだ。ちらりと確認すると窓側から二列目だし、後ろからは三番目だ。いい席だろう。このまま進めば夏にはエアコンの下で涼しく授業を受けられる。それに窓からそう遠くはないから時にはぼうっとすることも可能だ。それは勿論、出来ることなら窓側の一番後ろがいいなぁという希望くらいあるけれどそうそう当たれる席ではないのだ。
だけど、嫌味を言われ言う日々は私的にもあまり好きではないので月島とさえ離れることが出来ればどこだっていいと思えた。別に傷ついたとかそういうことは全くもってないけれど。きっと月島もあまり私のこと快く思っていないから、ならば距離を置けばいいと最近思った。

そう、出来ることならば。


「な、なんで」
「…うわぁ」
「…偶然だね」


私が金魚のように口をパクパクさせているこの状況は想像していなかった。月島が次は隣の席かと思えば、今度は少し離れたところにいた山口まで斜め後ろの席となった。どんな偶然だ、気まずそうに視線を逸らしながら頬をかく山口をどこか遠い気持ちで眺めた。





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