アイスクリームみたいに溶けちゃいたい
あったかい部屋のあったかいこたつの中で冷たいバニラアイスを口に含む至福のひととき。
舌の上でとろとろと溶けて甘味だけを残し消えていく。ああなんていう幸福感、こたつに入りながら食べるアイスは格別に美味しい。
一口、もう一口。スプーンに乗せたアイスを口元へ運ぶ手が止まらない。
うーん幸せだと頬を緩ませその美味しさに浸る私の耳にインターホンの音が届く。
誰だろうか、この幸せを邪魔するものは。
面倒くさいなと思いながら渋々こたつから出た。ううっ寒い!一瞬で体温が下がるとか、こたつ恐るべし。
冷えた体でドアを開けると、そこに立ってたのは無邪気な笑顔を浮かべた十四松くんだった。


「こんにちは名前!遊びに来た!」


いつもの黄色パーカーに短パン姿で頬に鼻が真っ赤な十四松くん。見てるこっちが寒くなる。
部屋に入れてこたつに入るよう促したら十四松くんはこたつに勢いよくスライディング。
あったけー!ケラケラ笑う姿が可愛くて私も笑いながらこたつの中へ入る。
冷えた体がどんどん温かさを取り戻していった。

「はぁー……あったかーい」
「名前っ名前っ!こたつめちゃくちゃあったけー!」
「十四松くんが冷たすぎるんだよ」
「確かにー!」

ケラケラ笑う十四松くんを横目に私は再びバニラアイスを食べる。ちょっと溶けてる、早く食べないと。
スプーンに乗せて口の中へ運んだ溶けかけのアイスはすぐにとろけて消えていった。甘い後味、溶けかけでもやっぱり美味しい。
頬を緩ませる私を十四松くんがジーッと声に出しながら見てきた。
食べたいのかな?そう思ってアイスを指差し「食べる?」と聞いたら、彼は無邪気な笑顔で「うん!」と頷く。
アイスとスプーンを差し出したら彼はそれを受け取らずジッと見つめた。


「………十四松くん?」
「……名前。もっとこっち来て!」
「えっ?うん……」


言われた通り体を寄せて十四松くんとの距離を縮めた。
近づくと彼は私の手をひっぱり、顔を覗き込む。
目の前の十四松くんはにっこり微笑んで私の肩に手を置いて、


「いただきます」


ちゅっ。と可愛らしいリップ音が部屋に響いて舌で唇をなぞられた。
一瞬だけ感じた柔らかい感触に頬が熱くなって、手のひらからスプーンが滑り落ちていく。


「……え?」
「あんまー!すっげぇ美味い……」


目の前の彼はへらりと笑ったかと思うと、私を優しく抱きしめた。
もっとちょうだい?。耳元で囁かれたのは、いつもの無邪気な彼とは違う異性を意識させる甘い声。
その甘い声に私は頷くことしかできない。


「いただきます」

再度律儀に挨拶をする彼の顔はいつもの幼い笑顔とは違う大人な、余裕の笑みを浮かべてる。
重なり合う唇に、鼓動がうるさく鳴ってる私の視界に映った溶けかけのバニラアイス。
ああなんだか。私の心もとろとろと、アイスクリームみたいに甘みを残し無くなりそう。

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