熱い頬が好きだ。円堂の頬はこの手で触れるとすぐに赤く染まって、目の前の少年もまた自分のことを好きだと明確に解らせてくれる。
その血色のいい唇に何度も口付けてやれば、赤い頬はますます高揚する。
南雲の顔の方もきっと逆上せたような情けない顔をしているのだろうが、見ているのは円堂だけだと思えば別段気にはならなかった。
南雲の、子供の身分で覚えた「悪い」キスに必死で応えようとする円堂の涙目を見ているのにそんな余裕はない、と言った方が正しい。
抱き合った身体から伝わる体温でじんわりと熱を持った円堂の腰をやや性急に抱き寄せる。
反対側の南雲の手に捕らわれていない方の円堂の手は、南雲の上着の生地をしっかりと握り締めて震えていた。南雲はそれを見て何故か和らいだ気分になり、しつこく吸っていた円堂の唇をちゅっ、と軽い音を立てて離れる。
こんな種類の熱さが自分のなかにあると、南雲はずっと知らなかった。
円堂の何もかもを貪りたい凶暴さを取り除くような穏やかな炎も。
ふたつがいつかは南雲も円堂も燃やし尽くしてしまいそう。
「…なぁ、お前、えっろい顔……」
「……ん…かお、あつ、い、」
「おれが、そんなにしたんだよ、ちゃんと、覚えとけ……っ」
「なぐ、…んぅ」
潤んで水の膜が張ったふたつの茶色い瞳に、息を切らせた自分の底無しの余裕のなさを見透かされる気がして南雲は円堂をかき抱いた。
どくどくと、ふたつの心臓の位置が重なって早鐘のように拍動する。鼓動が早くなる度に重なったふたつの身体も灼熱を別け合うように相手の体温と馴染む。
この熱さは、堪らない。その体温の正体が自分と、この円堂のものだと思うと尚更。
「…円堂、どうした?わりぃ、やり過ぎたか……?」
ぎゅう、と南雲の背中にしがみつく円堂の息をなだめ整えさせるように撫でる。熱くなった南雲の首筋にひときわ熱い顔を埋めて円堂が首を振った。もっと強く、抱き締めてしまいたい。
「こんな、熱くて、オレ…どうにかなりそう」
「…くくっ、安心しろ。こんな…キスじゃ、死んだり、しねぇ…」
「南雲のその顔、なんかかっこよくて…きもちよくて、」
「…っ、」
「すき、すきだ…南雲が、すごく」
「ばぁーか、俺もだ、まもる」
ふたつの温度差など一緒に融かして、一気に上昇させられる。
この熱を冷ます術だけは、今はまだ、知らない。
ふたりの愛の温度差について
(どちらが上かなんて明確な違いはわからない)
Largo
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2011.04.17