雨が、降っている。
それは昼から窓から見えるビルを濡らすように降り続いていた。


せっかくふたりで会えたのに雨じゃどこにも行けないね、と溜め息まじりに溢す遊戯に、遊星は少し微笑んで「遊戯と過ごせるならそれでもいい」と言うのだ。

それに外に出れないなら遊戯とだけずっと一緒にいられると、遊戯を赤面させることも忘れずに。



そして今日は1日中家でゆったりと話をしたり、寝転んだり、ずっと遊星の腕の中で過ごしていた。
食事の時も遊戯を離そうとしないものだから、照れつつも彼に尋ねてみると、今日は一瞬でも離したくはないと言う。

珍しく甘えたような遊星を嬉しく思いながら、遊星の膝に乗せられたままの昼食は恥ずかしいと遊戯はぽそりと漏らす。




「雨……すごい、音…だね」


ちょっとだけ忘れかけていた雨は夜になってもとどまることを知らなくて。
明かりを消された薄暗い部屋のベッドの上で、遊星の腕に抱き締められたまま遊戯は呟いた。

部屋を窓から差すシティの青い光が照らす。



「僕、ね。昔は…雨が嫌いだったんだ」

「…どうしてだ?」


ひとりごとのようにそっと言う遊戯の言葉を遊星が促した。
低い声を心地よく思いながら遊戯は続けた。



「暗いし、冷たくてさみしいような気がしたから。…今は、そんなことないけどね」


まだ何か聞きたそうな遊星に照れ隠しのように抱き付く。
優しく遊戯を抱き止めながら彼の頭を撫でて、今度は遊星が口を開いた。



「……俺も、夜が嫌いだった」

「どうして…?」

「俺が住んでいた場所はいつも暗かったからな…夜になると、一層」


そうして頭を撫でていた遊戯を引き寄せて、首筋に口付けて。

くすぐったそうに身を捩る遊戯の耳に唇を寄せて、低音を流し込む。



「今は遊戯がいるから、それも悪くない」


恥ずかしがって胸に顔を押し付けてくる遊戯を楽しそうに宥めながら、遊星はその小さい背をぽんぽんと軽く叩いた。




「何だか、逆転した水槽のなかみたい」

「…水槽?」

「ほら、外は水で、この部屋が水槽。」

「水槽の中にいるのはアンタと俺だけか……それもいいな、遊戯を逃がさないようにしてるみたいで」

「ふふ…別に遊星君から逃げたりしないのに」

「…本当?」



まだ起きていたそうにしている遊戯を布団の中に入れて、早く寝ないと明日起きれないだろうと眠るよう促した。
「子供あつかいした」と頬を膨らませる遊戯に遊星はフッと笑って。



「子供じゃないだろ。立派に俺を誘惑できる」

「ゆ、誘惑なんて…!」

「今の、違うのか?」




遊戯を大人しくさせるために今度は唇に口付け。

今はもう少しこのままで…。





慟哭
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2009.05.07
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