Prologue.
 


人とは終わりを迎えるために叫び、産声を上げてその地に生まれてくる。
全てに平等に与えられた権限が「命」と「死」。
物はどうか?物にも寿「命」と言うものがあるだろう?それと同じだ。
時は水の流れと同じだ。その流れは早く時として緩やかに。しかし決して待ってはくれない。手で掴もうとすればするりとすり抜け、過ぎ去る。遡ることは困難を極める。
そこにとどまるのは、難しいはずなのに。

俺が見届けてきた"世界"とは酷く狭苦しくて。当たり前のように朽ちてゆく命を「脆い」なんて考えてしまうほどにその目で見てきて。時としてこの手で奪い。
……俺は本当に人間なのだろうか。神様なんて存在するはずもないというのが俺の持論だが、こうも長い間生きて多くの命が絶えていくのを見ていると、どうも俺は人じゃないんじゃねぇかって。


「……くだらね」


ぽつりと呟いた俺の声に、批判でも同意でもなんでもいい。答えてくれる人がいるだろうか。
―――…いる訳ねぇよな。俺以外誰もいねぇし。ただの独り言だし。
確かに時計の針は動いているし、窓の向こうに見える街並みは活気づいていて歩き行く人たちは会話やら何やらで騒がしい。
けれどたまに俺自身の時が止まってる様に感じるのは……。



…考えるだけ無駄だ。一人で何を言ったって返事が返ってくるわけでもねぇ。

俺の無様な末路が変わるわけでも、なんでもない。





それでも俺は、たった一人でいいから。俺を愛してくれる人が。

俺の悲惨で哀れで笑っちまうくらいに報われない、茶番みたいな運命を人生を因果を。


一緒に過ごしてくれる、大切な人が欲しかっただけさ。

ヒーローアニメやらなにやらでありがちな、「お前は俺が守る」なんて言葉を一度でいいから言いたいだけさ。

その辺にありふれててはたから見りゃ呆れられるような幸せを、




……それくらい、望んだって罰は当たらねぇだろ?



これは"名前もない"話さ。





――――【noname】Prologue.



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