記憶と、耳の中に残る、かすかな……声。
「ごめん、ごめんね。芯……。」
誰だったっけ。はじめて俺に、泣きながら謝った奴。涙なんて、欲しくない。
無個性な自分のために、誰かが流す涙なんて。
見たくないんだ。
自己嫌悪に陥って、抜け出せなくなった。心も、体も、沈んでいく。
「……じゃあ、今日はこれで終了にしよう。」
「え、黒原先輩……まだ1時間しか…。」
「悪いが、帰らせてくれ。 少し体調が悪いんだ。」
「あ、はい……」
「海翔(副部長)、後は頼む。」
「あ、ぉいっす。」
「……ただいま。」
「芯?サークルは?」
「……休む。」
「ちょっと、芯!」
母さんの声も、うるさい。放っておけ。そんな事も言えないのは、クズなんだ。
「芯!」
「……ねえさ、ん」
「やだ、ほんとに顔色悪いわよ?!」
それから、意識は遠のいていった。
どうして、こんな事になったのだろう。思い出しては、このざまだ。
もう、あれからかなりたつのに。
弱い、自分。それを信じたくなくて、おれは一層強く目をつむった。
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