おのろけ | ナノ
支援会話ネタバレあります

ソフィア城奪還後くらいの頃



静まりかえった夜。フォルスは見回りで不在。
小言を言われることもないため、パイソンは一人のんびり酒を楽しもう…としたのだが、何となく話し相手が欲しくて、ルカを自室に引っ張り込んだ。

巻き込んだルカには酒の肴に好物を用意してやって、これまでの事、これからの事などなど。他愛もない話をしていれば、二人とも程よく酔いが回って来た頃。

「そういやルカ、例の女と進展でもあった?」
「何もありませんよ。いきなりどうしたんですか」

酒の席だし、多少は気の知れた仲だ。そう思って聞いてみれば、思った通りの答え。
少しちょっかいを出すくらいなら大丈夫だろう。

「何となく雰囲気が変わったからさ、ついにルカにも春が来たかーと思ったワケ」

悪戯っぽく笑って冗談を言った。パイソンはそのつもりだった。
しかし言われたルカはといえば、驚いたような顔をした後、柄にもなく思い切り目を泳がせて。

「……覚えがありません」

と、蚊の泣くような声で告げた。
こんな反応をされてしまえば、図星ですよと言っているようなもの。

「えっ、もしかして本当に春だった!?そっか…あのルカがなー…おめでとさん」

ほんの冗談が本当だったと知り、しみじみとグラスの酒を眺めていたのも束の間。パイソンは子供のような表情になって、ルカの“春”について探りを入れ始めた。

しかし、彼は口を割ろうとしない。気恥ずかしさもあるのだろう。
懸命に頼み込み、最後には何でも好きなものを奢るからと頭を下げたところでようやくルカは根負けした。
酔いで頭が上手く回っていないことも、パイソンが押し勝った理由の一つである。

興奮したパイソンが矢継ぎ早に質問すれば、ルカは「そんなに一度に聞かれても困ります」とたじたじになって。

「ごめんごめん。じゃあ、まずひとつめ。どんな子?」

気を取り直して、といった感じでパイソンが尋ねれば、頭の中に恋人の顔を浮かべているのだろう。
少しの間顎に手をやって、考える仕草をした後に。

「目がぱっちりしていて、どこかあどけなさがあって」
「へえ」

人の恋模様など聞いて、何が面白いのだろうかとルカは思っていたが、何も言わない事にした。
だって、パイソンがあまりにも嬉しそうに聞いているものだから。

「普段は可愛いのに、戦場では最前線に出て。並み居る敵を討ち倒す姿はとても凛々しいんです。でも、それが少し心配といえば心配なのですが」
「うんう…ん?」

パイソンは違和感を覚えた。軍にも女性はいるが僅かだし、更に凛々しく前線に出るともなればマチルダくらいしか思い当たらなかったからだ。
しかし、ルカはマチルダに靡いている様子など微塵も見せなかったし、彼女はあどけないと言うよりは艶やかな方だろう。

「青さゆえに感情のまま動く事も多々あります。しかし、とても真っ直ぐで、困っている人は見過ごさないくらい優しいんです」

思い出しているのか、恍惚とした表情で語るルカ。最後の極め付けに。

「あらゆる人を惹き付ける魅力もある。それに笑った顔は太陽のように眩しい、素敵な素敵な人なんです。私には勿体ないくらいの」
「なあ、ルカ」
「はい。何でしょう?」

パイソンはここで、違和感は本物だと確信する。
今、自分ににこやかに返事をしてみせたルカの“春”の相手は女性ではなくて。

「それ、大将でしょ」

途端にルカの顔が朱に染まる。「どうして」とか何とか言われたような気がしないでもないが、ここまで惚気られてしまえば分からない方がおかしい。
思い切り狼狽えているルカを宥め、空になっていたグラスに酒を注ぎながら、パイソンは口を開く。

「ま、相手が誰であれ祝福するよ。大将の事話してたお前、幸せそうだったし」
「あ、ありがとうございます、パイソン」
「ルカの春に乾杯。さ、今夜は夜通し飲もうぜ」

パイソンがグラスを掲げながら言えば、ばれてしまったことで吹っ切れたらしい。
いつもの調子に戻ったルカから「それはただあなたが飲みたいだけでしょう」と、中々に痛い所を突かれたのだった。



リンクはアルルカ薄めに入れるか迷いましたがアルルカ前提でお話進めてるのでいつもの場所にしました

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