しがつばか | ナノ
勢い四月馬鹿


各々で用意した食事を持ち寄り、二人して向かい合わせに座って、それからいただきますをする。

「ルカ、これ…」
「アルムくん。これを…」

ほぼ同時に口を開き、手持ちの食事のうちのひとつを差し出した。

“嘘を吐いてもよい日”とされている今日。
だからと言ってアルムもルカも、それに乗じて嘘を吐いたりはしていなかった。

けれども二人は差し出された料理に手を付けない。なぜかと言えば、お互い苦手な物を寄越されたから。
普段は会話が絶えないこの時間も、今は警戒しているのかしんと静まり返っている。

「見た目は完全にアルムくんの苦手な焼き菓子ですが違います。丸めた挽き肉を潰したジャガイモで包んで焼き上げたものなんですよ。……甘い香りは上に載っている果実のせいです」

沈黙を破ったのはルカだった。
表情はなんてことのない、いつもの微笑み。それが余計に警戒心を煽るのは、気のせいではないとアルムは感じていた。

「奇遇だね。僕があげたグラッセも、見た目はまるきりにんじんだけど特別なヤムイモなんだ。とっても甘くて美味しいらしいから、心配しないで食べてみてよ」

言って、自分を見つめる瞳はいつものように真っ直ぐで。でも、真っ直ぐすぎて怪しい。
と、ルカは思っていた。

「ええ、いただきます。ですからアルムくんも食べてみてください」
「分かった」

微笑みを崩さず告げ、それとなくアルムにも口に運ぶよう促すと彼は頷いた。

渡された料理の載った器を手に取って見つめる。ただただ見つめる。
再び流れる沈黙。二人とも、一向に料理を口に運ぼうとしないからだ。まるで終わりの見えない沈黙を、今度はアルムが破った。

「そっくりすぎて、なかなか勇気が出ないや」
「なら、食べさせあいっこしましょうか」
「うん。そうするべきだ」

ルカの提案にアルムが賛同したと同時に、料理を交換する。
自分の所に戻ってきたそれを小さめに切り分けて、お互いの口元に持って行く。

「せーので食べよう」
「分かりました」

アルムの合図でようやくお互いの口に入った料理の味は案の定、好物ではなく苦手なものだった。



この後また交換こして美味しく頂きました
さつま芋とはちがうけど似た感じのやつらしいです(ヤムイモ)

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