初めてのこういん | ナノ




先の戦でルカが負傷してしまった。
幸い命には別状はなく、シスターの白魔法で傷はすぐに塞がったものの暫くは安静が必要との事で、戦線には出ず拠点で待機をしている。

寂しくて仕方がなかったので、アルムは何かと理由をつけてルカに会ってはいた。
しかしそれはごく短い時間。
欲求が満たされる訳もなく数日間の離ればなれの気分を味わう事になった。

今までにない集中力で軍議や鍛錬を全て終え、ようやくまとまった時間の取れたアルムは、意気揚々とルカの休養している部屋へと向かう。
まともに話ができるのは何日ぶりだろうか。
目的地に近づくほど、頭の中がルカの事でいっぱいになる。無意識に歩調も速くなり、あっという間に扉の前に着いた。

声を掛け、返事を待たずにアルムは扉を開けた。まっすぐにベッドの上にいるルカの元へ歩み寄る。

ルカはベッドボードに背を預け、しとねの上に腰掛けていた。読んでいたのか、ベッド脇のテーブルには栞の挟まれた本が置かれている。
入ってきたアルムの顔を見ると穏やかな笑みを浮かべた。

「どう?まだ痛む?」

聞いてから、部屋に備え付けられていた椅子をベッドサイドに置き、アルムはそこに腰掛けた。

「大分動けるようになりましたし、痛みも引いてきました。ですが無理はしないようにと」
「そっか」

アルムは話したかった沢山のあれこれを紡ぎだす。
笑ったり怒ったり。表情をくるくる変えて話すアルムにつられ、ルカも表情を変えながら聞いていた。
満足行くまで話し尽くし、いったん会話が途切れた時。

「あの…こちらに、来てくれませんか」

ルカは自分の腰掛けているしとねをポンポン叩いてアルムに告げた。少しだけ、照れくさそうに。

「えっ」

思ってもいなかった申し出。
実のところ、数日間ろくに会えず触れられずのお預け状態だったお蔭でアルムは我慢の限界だったのだ。

これ以上近づいたら欲望に負けて押し倒してしまうかもしれない。たった今“無理はしないように”と聞いた手前、その事態だけは避けたかった。

「アルムくん…?」

悩んでいる間に呼ばれ、顔を上げる。不安そうなルカを見て腹をくくった。
理性は持つだろうかとか、そういう余計な事は意識しない事にする。

隣に腰掛けてやると、ルカは嬉しそうにアルムに抱きついた。

ふわんと香るルカの匂い。伝わる体温。
何でもないように振る舞えてはいたが、アルムの内心はそれどころではなかった。
下半身に集まってくる熱を理性を総動員して抑え込む。

「ずっと、こうしたかったんです」
「…僕も」

もっと濃密な触れ合いがしたいです!とも言えずそう答えてやれば、心底幸せそうに微笑み、顔のいたる所に口づけを落とされる。それだけでもう、アルムの中の理性の壁は音を立てて崩れ始めた。

「…ごめん。あの、そろそろ…、」

コホンと咳払いをしルカの唇に手のひらを当て、続いていた口づけを制す。

「ルカ、まだ激しい事できないだろ。だからあんまり刺激されるとちょっと辛いんだ」

ここが、と主張している自身を指差しながら告げればルカも察したらしい。名残惜しそうに体を離した。
かと思ったら、アルムの足の間に体を移動し、うつ伏せに寝転ぶ。

「ルッ…、ルカっ!?」
「…わっ…、わた、し…が、アルムくんを、気持ちよく、してあげます」

言葉の意味を理解しかねて、アルムの体はフリーズの魔法を受けたように固まった。
やっと回ってきた思考で「またそんな冗談を」と返そうとしたが、まっすぐに見つめてくるルカの目は真剣そのもの。

「気持ちよく、って…無理しちゃ駄目だってさっき…ちょっ…」

アルムのズボンの前を寛げ始めたのだから、ひどく慌てた。起き上がるよう促しても、ルカは聞く耳を持たない。

「……そのっ、く…、く、ち…、口で、します。元はといえば私の不甲斐なさからアルムくんに辛い思いをさせてしまっているのですから。やらせてください」
「い、いやでも」
「アルムくんが本当に嫌なら…やめます」

渋るアルムに、ルカは眉を曇らせアルムの性器を取り出す手を止めた。
好きな人からの口淫なんて、嫌な訳がない。アルムもいつかルカに強請ろうとは思っていたが、なかなか切り出せずにいたぐらいだった。
返事なんて決まっている。

「是非ともお願いします」

なぜか敬語になってしまったアルムの返答を気にする様子もなく、ルカは立ち上がりかけているアルムの性器を取り出し、ゆるく握り込んだ後に彼を見上げて。

「…いいところも、いやなところも、全部教えてください。…その……はじめて、なので…」

そう告げた後、恐る恐るといったように陰茎に顔を近づけ亀頭を口に含んだ。
ぬるりとした生暖かい感触がやってきて、アルムはビクリと身を震わせる。
飴を溶かすようにひたすら鈴口だけ舐められるのが、少々もどかしい。

ルカもアルムの反応が薄い事に気が付いたのだろう。
陰茎から口を離し、困った顔でアルムを見つめた。指示を待っているのかもしれない。

「えっと…、口だけじゃなくって、手も使ったらいいんじゃないかな。こう、裏側の辺りを……あっ!でも無理はしないで。絶対」

アルム自身、口淫をされた事もした事もないので抽象的な指示になってしまったが、ルカは「分かりました」と首を縦に振り、言われた通りに手を使った愛撫も始めた。

「…きもちい…、…れすか?」

吐息に艶が混じってきたからだろう。口の中で陰茎を咥え込んだままルカに尋ねられる。
声の振動で、アルムは思わず上ずった声が出てしまった。

「…ンンッ、…うん。気持ちいいよ、ルカ…その調子」

褒めるように頭を撫でてやる。動きはそのままに、ルカは目尻を下げた。
片方に必死になってしまいどちらかの愛撫がお留守になってしまう時もあれど、懸命に自分に奉仕しているルカの姿を眺めているだけで、アルムの熱は昂っていく。

「…ハッ…、…ウゥッ…、あッ、…――ッ」

同時に、舐めているだけだった鈴口の愛撫に変化が起きる。
溢れ出てくる先走りを零さないようにするかのように、吸い上げが混ざるようになった。

そのために手が留守になる事が増えていき、暫くすると思い出したようにいそいそ竿を擦られる。
この刺激も、吸い上げる時に稀に当たってしまう歯も、全てがアルムを快楽へ誘う材料。

アルムの陰茎もルカの懸命な愛撫を受けてはちきれんばかりに怒張し、限界が近い事を知らせていた。

「ルカッ…もっ、でるっ…から、……!離しっ……うぁああっ…!!…、…あ…」

愛撫に集中して離れようとしないルカの頭を腕で突っぱねようとしたが、遅かった。
欲は残さずルカの口内に放たれてしまう。

「ごっ…、ごめん!」

余韻に浸る間もなく、アルムはしどろもどろになる。
吐き出させるために辺りを見回し受口になる物を探す。当たり前だが見つからず、ルカの手を引き起き上がらせると自分の手のひらを口元に持って行ったが、ルカは首を横に振って喉を何度か上下させた。

「……のっ…、飲んだの!どうして!」
「…だって、寝具を汚してしまうでしょう。それにアルムくんが出してくれたものですから。それと」

にこやかに言い放つルカにアルムは唖然とする。
本当に初めてなのかと問い質したくなったが、ルカにはまだ聞きたいことがあるようだった。
行為中のあの仕草から考えれば本当だろう。一人でそう結論付けて、言葉の続きを待つ。

「…もう、辛くないですか?」
「うん。お蔭でスッキリできたよ。ありがとう」
「それはよかった。……なら、今夜は…、その、久しぶりに一緒に、」

眠ってくれませんかと尋ねてくる声は、先程とは比べものにならないくらいにしおらしかった。





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