積極的なルカ | ナノ
1/27は求婚の日とのことで


いつも後に続いてばかりだと、ルカは気が付いた。
思い返せば「好きだ」と想いを告げてきたのもアルムからで、触れるのも愛を囁くのもほとんどアルムから。
ルカはそれに続くかたちで触れ、言葉を紡ぐ。

突っぱねられるのが怖くて自分から触れられないとか、そういうことはもうない。
彼の“いちばん”は自分。自分の“いちばん”だって彼。
何度も言われているし、ルカ自身も告げている。
突っぱねられるなんて事は絶対にないと分かっているのだ。

だから続くばかりでなく自分からと意を決して行動しようとするけれど、どうしてもアルムに先を越されてしまう。
終わった後には決まって微笑みながら「こうしてほしそうだったから」と言われて。
しかも“してほしい”ではなくて“したかった”という違いはあれどその通りなのだから、驚かされるばかりだった。

そのくらいよく見てくれている、ということなので悪い気はしないし嬉しい。

でも、時には主導権を握りたい。
自分の方が年上なのだから。

頭の中で考えを巡らせた。

甘えるのは何かが違う。
クレーベ辺りに聞いてみればとも思ったが、情熱的すぎて参考にならないだろうし、何より尋ねたところで惚気られて終わるに違いない。
本をめくってみたり、一日中考えに考えて、ルカはようやくひとつの答えを出す。

数日後に二人揃っての非番があるので、決行はその日にする事にした。
踏み込む勇気がなくて、先送りにしたとも言うのだけれど。

________

いよいよやってきた非番。
抜けるような青い空が広がっていた。散歩をしたのなら、さぞや気持ちが良かっただろう。
二人で外を歩けばチャンスもたくさんできたかもしれない。

けれどこの日の予定は読書になった。
珍しいことに、アルムがルカの読んでいる本に興味を示したから。手持ちの中からアルム向けの小説を見繕ってやる。
天幕の中、ぴったりくっついて二人は読書を始めた。

読み始めて少し経った頃。早々に飽きてしまったのだろう。本を閉じたアルムがルカにちょっかいを出し始めた。
頭を撫でられたり、頬をつつかれたり、ポスンと寄りかかってきたり。

「……アルムくん」
「へへ」

咎められると思ったのか、アルムは悪戯っぽく笑った後、誤魔化すように口づける。
ふにゅと触れ合った部分があたたかくて気持ちいい。

「んー、足りなさそうな顔してる」

離れたと思えばそんな事を言われ、角度を変えてもう一度。意識が少しだけ、とろり蕩けた。
持っていた本が滑り落ち、ぽすんと小さな音を立てる。
その音でルカは我に返った。

ここでされるがままになってしまってはいつもと変わらない。強請りたいのをグッと堪えて顔を離す。
触れるのは続くかたちになってしまうけれど、言葉だけでも先に言おうとルカはアルムの名前を呼んだ。

「どうしたの?もしかして愛…んむっ」

やろうとした事を早速言い当てられそうになり、慌ててアルムの唇を自らの唇で塞ぐ。

「……っ、今日は、私から先に言わせてください」
「…う、うん」

アルムはこくり頷くと口をきゅっと結び、まっすぐにルカを捉えた。
愛してやまない瞳に見つめられ、ルカは体温が上がっていくのを感じる。
これから言う言葉を思うと、逃げ出したい気でいっぱいだった。それではいけないと自分を叱咤し、深呼吸の後アルムの手を取って。

「アルムくん、愛しています。これからもずっと、私の隣にいてください」

言い終えた達成感で、ルカはほうと胸を撫で下ろした。
アルムの方はといえば、目を丸くして、顔を真っ赤に染めている。名前を呼ぶと、ハッとした顔で「はい、喜んで」と返された。

「ありがとうございます。何を今更と思われるかもしれませんが、こういった言葉はいつもアルムくんからでしょう?なので時には私からと思いまして」
「……珍しく積極的だったから多少の予想はついてたけど、あまりに直球で驚いた。もちろん嬉しいよ?」

感謝の言葉を述べると、アルムはルカの手の甲にひとつ口づけを落とした。

「ふふ…恋人同士は似るといいますから、私もアルムくんに似て積極的でまっすぐになってきたのでしょうか?」

自分の思惑通りに事を運べたルカは満足そうに笑って、アルムに倣う。

「へえ…ならこの調子でどんどん僕に似てほしいな。……もちろん、夜の方も」

情事の時と同じような声。しかもそれを耳元で発せられて、今度はルカが顔を真っ赤にする番になった。



主導権とはいったい うごごご…

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