慣れていこうね | ナノ
甘さ控えめについて考えた結果
行軍が終わって、野営地を設営した後。
アルムはルカを見つけるや否や、少し緊張した面持ちで彼を散歩に誘った。
恋人として付き合い始めたばかりなので、ちょっとしたデート気分を味わいたかったのだ。
ルカもアルムの提案に、はにかみながら首を縦に振る。
「……えっと、…じゃ、行こうか」
「ええ」
野営地から遠ざかるように歩くこと数分。周囲に人影はないし、風で草木が揺れる音しか聞こえない。
ルカは二人でいられるだけで幸せだと言って、ただアルムの横について歩いていた。
けれどアルムは違った。せっかくの二人きり。野外なので体を重ねたい…なんて事は言わないけれど、口づけ…いや、手を繋いで過ごすくらいはしたい。
恋人同士なんだし、遠慮することもないかなとアルムはルカの手を取った。
「……!」
いつものように握り返してもらえると思いきや、目を見開いてアルムの手を振り払ってしまう。
「………ごめん。嫌だった?」
気に障ったろうかと聞いてみると、ルカは慌てて首を横に振った。それから、困ったような顔で。
「……実は、親密なお付き合いをするのはアルムくんが初めてなんです。なので、突然こういう事をされるのには、慣れていなくて」
「……慣れてない?でも、いつもは普通に握ってくれるよね」
振り払ってしまうほど慣れていないのなら、その時に差し出した手だって握ってくれないはず。
首を傾げながら聞いてみると。
「いつもは心の準備をしていますから。しかし先程は完全に………あっ」
「心の準備?もしかして、僕がいる時はいつ触られてもいいようにずっと気張ってる?」
どうやら図星を指されたようで、しまったという顔を見せる。
それから少しの間の後「すみません」とルカは俯いてしまった。
「…………そっか」
「………はい」
「分かった。慣れるまで、僕は暇さえあればずっとルカに触れてることにする。たとえ泣いてもやめないから」
言い終わると同時、アルムはルカに抱きつく。驚いたルカは身を固くして、か細い声で。
「……ア、アルムくん……」
「そんな声出してもダメ」
「うぅ…」
この後アルムは、野営地に戻っても天幕に入ってもルカに抱きつくのをやめなかった。
泣いてもやめないと言った割には、堪えきれなくなったルカが涙を浮かべた途端に離れたのだけれど。
触れられ慣れていないルカのはなしになりました
彼が語る家庭環境的にはアリかなあと思って(曲解)
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