性夜にはならない | ナノ


冬至の前夜祭。全員でのささやかなパーティーを終え、宿の部屋で一息。
ルカは部屋の隅に目立たないように置かれた荷物を探り、目的の物を手に持って。

「アルムくん。月並みですが、どうか受け取ってください」

差し出したのは花束。

今まで他人に贈り物などしたことのなかったルカはアルムに何を渡したらよいか分からず、考えに考えた。
仲間たちから贈られるものは菓子類が多かったが、アルムは甘い物を好まない。
貰ったものに倣ってしまえば迷惑になってしまうと思い、出した答えが花束だったのだ。

「すみません。もっと気の利いた物を差し上げられればよかったのですが」
「ううん、草だって棒切れだって石ころだって、ルカがくれるものなら嬉しいよ」

明るい顔でそれを受け取ると、ルカの手に一つキスを落として礼を告げる。

「じゃあ、僕も…」

アルムも同じようにプレゼントを用意して部屋の隅に置いていたらしい。ふっと笑って、荷物の中から長いリボンの掛けられた箱を取り出した。

「はい」とそれを手渡し、アルムはルカに箱を開けるように促す。
ルカは箱のあつらえの良さに目を丸くしたが、リボンを解き中身を見て更に驚いた。

入っていたのは襟巻きとたくさんの焼き菓子。しかも、襟巻きは動物の毛皮が使われたもの。毛並も手触りもよく、とても暖かそうな。
ルカもペコリと頭を下げてアルムに礼を告げる。それから、申し訳なさそうに。

「襟巻きはいただけません。私が差し上げたものと釣り合いが取れませんから」

焼き菓子だけを取り出してから襟巻きを箱ごと返そうとしたが、当然アルムはそれを良しとしない。
何度かの押し問答が続いた後。

「じゃあ、こうしよう。この花束の他に、きみからもう一つプレゼントが欲しい。キスでも、抱き締めるでも、何でも」

アルムは提案してみせたけれど、ルカは未だに尻込みしている。提示したプレゼントの内容に物申したいのかもしれない。
追い討ちをかけるように頬を膨らませて、強めの口調で。

「ルカがくれるものなら僕はなんでも嬉しいんだ。さっきも言ったろ」

これでようやくルカは折れた。
アワアワと顎に手を当てて、しばらく考える仕草をしてみせる。
そして襟巻きを入れるのに使われていた箱のリボンを、自分の頭に括り付けてアルムに擦り寄って。

「…どうしたの?」
「くちづけも、抱き締めるのも、釣り合わないと思ったので…、その…、……『私』を…差し上げようと……なのでこの先は、アルムくんのしたいように…」

相当に恥ずかしいらしい。最後の方は消え入りそうな声だった。
いけませんか、と俯いてしまったルカを「…最高のプレゼントだ」と、アルムは掻き抱いた。



自分を差し上げるの好きなんです

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