おかえし! | ナノ
(落ちが読めて)申し訳ございません



「…無理しないで食べたら?」

苦笑しながら自分の分の甘味が載った皿を差し出すアルム。
その言葉に耳を貸さず、皿も見ず。ルカは首を横に振る。
いつもはアルムの代わりにペロリとそれを平らげてしまうルカだけれど、今そうしないのには理由があった。

「それはアルムくんが食べなさい。この間の夜のお返しです」
「この間の夜って…。ルカ、僕に泣かされた事まだ気に…」
「あれは演技と何度も言っているでしょう」

ピシャリとルカは言い放つ。
“この間の夜”は、先日廃墟の教会でやった二人だけの結婚式。……の後に宿でした“初夜ごっこ”の事。
その時にルカはアルムに意地悪をされて泣いてしまったのだ。(本人は頑なに演技と言って聞かないけれど。)
それをしっかり根に持っていたらしい。アルムに意地悪をやり返そうとルカが実行したことが、彼の分の甘味を食べてやらない事。
当然アルムは困るけれど、ルカ自身も好物を目の前におあずけを食らうという、諸刃の剣の作戦だ。

「…美味しく食べてくれる人に食べてもらったほうが、このデザートも喜ぶと思うんだけど」
「運が悪かったと諦めてもらいましょう」

先ほどからずっと、このような不毛なやりとりが続いている。
そんな時、二人の横をフォルスが通りかかった。
手には空の食器。片付けるために席を立ったらしい。

「ルカ、今日はアルムの分の甘味を食べないのかい」

皿を見ながら声を掛けたフォルスにルカは「今日は気分でないので」と返す。
すると、フォルスはパッと明るい顔になって。

「じゃあ、僕が代わりに食べてもいいかな?大好きな味でね。パイソンの分も食べたけれど、できればまだ食べたいんだ!」

聞いてくるフォルスの目は、とてもアルムが断りきれるようなものではなかった。
目線だけをルカに向け様子を伺う。
ルカはこくりと頷き、皿を差し出してフォルスに告げた。

「どうぞ。美味しく食べてもらったほうが、このデザートも幸せでしょう」

断りきれる自信がないのは、ルカも同じだったらしい。
仕返しは、残念ながら失敗に終わってしまった。




意地悪したアルムくんに仕返しをしたかったルカのはなし、でした

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