またこのネタかや | ナノ


気分転換にと、アルムとルカは拠点近くの街に繰り出した。
途中、酒場に向かう途中と思われるフォルスとパイソンに出くわしたのだが、それがアルムにとっては運が悪かった。
二人を見るや否や、パイソンは丁度よかったと笑みを浮かべて。

「大将、悪いけどルカとも話したいからちょっと借りてくね。寂しくなったら取り返しに来て〜」

と、ルカを連れて行ってしまったのだ。

本当を言えば離れる事すら寂しいのですぐさま取り返しに行きたかったが、きっとなにか大事な話があるのだろう。
それを自分の我儘でやめさせるのは幼稚すぎると思い、何とか踏みとどまった。

(1時間…は早すぎるか。せめて2時間は我慢したほうがいいかなあ)

迎えに行くまでの時間を2時間と決めて、次はどうやって時間を潰すか考える。
拠点に戻っても一人では退屈だし、幼馴染達と過ごすにも“ぴったり2時間経ちました。それではお迎えに行きます”では、彼らの後味が悪いだろう。

仕方なしにアルムは一人、街の散歩と店を見て回るのを繰り返して過ごす事にした。
その合間合間に、時計の文字盤に何度目をやっただろうか。

(行っちゃおうか。着く頃には2時間経ってるだろうし)

もうどうしても耐え切れなくなって、酒場に向かった。

__________


結論から言って、早めに行って正解だった。

以前4人で飲んだ時よりもルカは酔っていて、心配したアルムが彼の目の前に駆け寄るや否やルカは間延びした声を上げ、舌足らずに名前を呼んで、頬ずりまでしたのだから驚いた。

フォルスはそれを見てケラケラ笑い、仲が良くて羨ましいよ!と、ぽんぽん…というよりは、バシバシとアルムの頭を叩く。
とても加減をしているとは思えない強さで、非常に痛かった。やはりフォルスも酔っている。

意識がハッキリしていたのはパイソンだけ。
聞けば、ルカとフォルスは店の名物だという豊富な種類のカクテルを次々と飲んだらしい。それこそ、制覇する勢いで。

ルカを連れ出した上にこんな事になってしまい悪気があるのか、申し訳なさそうに口を開いた。

「ジュースみたいなのばっかりだったから、こいつら飲んでるのが酒だってのも忘れてグイグイ行ったみたい。強いからって勝手にさせすぎた。ごめんなあ」
「謝らなくていいよ。パイソンだってこうなるとは思ってなかったんだろ」
「やっぱり優しいねえ。優しいついでにルカ頼める?俺は何とかしてこいつ運ぶから」
「うん、任せて」

頷くと、パイソンはさんきゅ、と礼を告げてウェイターに代金を支払いに席を立つ。
程なくして戻って来た彼と一言二言会話を交わしてから、アルムはルカに肩を貸してやり、今度は拠点へ歩を進めた。

__________

拠点の部屋に到着した頃には、ルカはほとんど眠っている状態だった。
いったんベッドに座らせて、声を駆けてやる。

「ルカ、大丈夫?水飲む?持ってこようか」
「い、え…、もう、けっこうです…。ア、ルム、くんが…、しんぱい…しますから。かえらないと」

歩いているうちに意識がごちゃごちゃになり、酒場で飲んでいる気に戻ったらしい。ゆるゆると手のひらを振って断りを入れられた。
こんな時でも自分の事を気遣ってくれて嬉しいのが半分、目の前にいるのに気付かれていなくて悔しいのが半分。
なのでアルムは両手でルカの頬を包んで、しっかり自分の方を向かせて、言い聞かせるように告げる。

「僕はここにいる。ちゃんと見て」

すると、ルカは目をぱちくりさせた後、安心したようにへにゃ、と笑って。

「あー…。アルム、くん…だ。おかえり、なさい…」

きちんと分かってもらえた所で満足したので、手を離して頭を撫でた。
口調もなんだか普段より砕けている。一緒に帰ってきておかえりもただいまもないのだけれど、何も言わない。

「うん、アルムだよ。ただいま、ルカ」
「……ね、アルムくん、こっち…きて…」

腕を広げられたので、言われた通りに近付いて腕の中に入ってやる。
するとルカはアルムを抱き枕の代わりにするかのように抱きすくめ、ベッドに横になってしまった。

「…アー、ルー、ムー…くーん…」
「なに?」

身動きが取れないので、返事をしてそのまま様子を見る。ルカの顔が近づいて、ふに、と唇に軟らかいものが当たる感触。

「………す、き…」

眠気のせいかとろんとした顔で言った後、すぅと目蓋が閉じられる。
アルコールの匂いと甘い味の混じった口づけ__文字通り“甘い口づけ”は、ある意味忘れられないものになった。



やりたかったのは最後だけ
願望まみれですいません殴ってください

  TOP

小話部屋TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -