しろ | ナノ
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その後、再びウェディングロードを歩いて出入口の前に戻ってきた。これで式は終わりとルカは思っていたのだが、どうやらそうではないらしい。
アルムの腕は三度皮袋に伸ばされて。出てきたのはスイートクッキーの包み。

「式の事調べてる時に、異国ではケーキを食べさせ合いっこするカップルもいるっていうのを見たんだ。それがやりたくて、代わりにスイートクッキー持ってきた」
「でもアルムくん。きみは甘い物が…」
「うん。でも、挑戦してみるよ。心の準備したいから、ルカから食べて」

それからアルムはクッキーを一枚取り出し、ルカの口元に運ぶ。
流石は好物だけあって、食べ進めるのも早い。サクサクと軽い音を立て、アルムの持っているクッキーは瞬く間に小さくなっていく。
心の準備をする暇はなさそうだった。

クッキーが姿を消して暫くした後。ルカの喉が上下したのが見えて、完全に飲み込んだのが分かった。
自分がされたように、ルカは包みからクッキーを取り出してアルムの口元へ持って行く。

「さ、アルムくんもどうぞ」
「う…、うん…」

そろそろとクッキーに口を近づけたり、そうかと思えば遠ざけたりを数回繰り返してから。

「ねぇ…やっぱり食べなきゃだめかな」
「おや。挑戦してみると言ったのはどこのアルムくんでしたっけ?」
「せめて一口だけでゆ…」
「苦手な物も男らしく食べきったアルムくんはさぞかし格好いいのでしょうね。出来る事なら、是非ともこの目に焼き付けたいです」

うっとりした顔で言われて、アルムは参ってしまった。
ルカにその気はないのだろうけれど、なんだか逃げ道を塞がれたような気になってしまう。
意を決して、一口で全て口の中に収める。勢いが良すぎてルカの指先まで含んでしまったので、慌てて顔を離した。

噛む程に甘ったるい味が口の中に広がる。
今すぐにでも吐き出したい気分だったが、食べ物を粗末にするような事はしたくないので気合で堪えた。
何とか飲み込める大きさまで噛んで、ごくんと飲み込んで。

「…あぁー……食べられたぁ」
「ふふ、よく頑張りました。とても格好良かったですよ?」
「本当?惚れ直した?」
「ええ。もちろん」

頷き、よしよしとルカが頭を撫でてやると、アルムは喜びに満ちた声で話を切り出した。

「ねえルカ。僕たち今日からめでたく新婚さんだよ!」
「そうですねぇ。幸せすぎてどうにかなってしまいそうです」
「新婚さんといえば…」

勿体ぶっているのか、恥ずかしいのか。中々続きを言わない。幸せの余韻に浸っている最中なのかもしれないと考え、ルカも急かすことなく続きを待つ。

「初夜だよ!今まででいちばん優しくしてあげるからね!!期待しててね!!」

体を重ねた事は何度もあるのだから、初夜という表現はおかしな感じだ。
けれどアルムは得意気な顔で言い放つと、来た時と同じようにルカの手を引き、善は急げとばかりに駆け出して。

「…もう、アルムくんたら」

前を行くアルムに気付かれないように、ルカは一つ笑みを零した。



おつきあい有難うございました!
ケーキの食べさせ合いは披露宴でやる事ですが
細けえこたあいいんだ!よ!!!


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