ゆきのはなし | ナノ
あられやこんこ


いつにない肌寒さを感じてアルムは目を覚ます。起床時間よりだいぶ早いようだ。
外は不気味なほどに鎮まり返っている。
不思議に思って覗いてみると、何もかもが雪で覆われた、真っ白な世界が広がっていた。温暖なソフィアでは滅多に見られない光景に心が弾む。

早速ルカに知らせに行こうと上着を着込んで天幕を出る。
幼馴染達はまだ誰も起きていないらしい。目を覚ましているのなら、遊び相手の為とっくの昔に自分は叩き起こされていただろう。

きゅっ、きゅっ、と1歩毎に音を立てて固まる雪の感触が心地よかった。
振り向いて自分の通ってきた道筋を見てみる。当然だが自分の足跡しかついていない。
何ともいえない優越感に浸りながら、アルムはまた歩を進める。

遠慮なくルカの天幕に入ると、やはり彼もまだ夢の中だった。
毛布に包まり胎児のように丸くなっている姿が余りにあどけなくて、暫し見入ってしまう。

「ルカ、起きて」

言って、毛布の上から軽く揺さぶってみる。
よく眠っていたので心苦しかったのだが、それよりも早く二人で外に出たい気持ちの方が勝ってしまった。

身じろいだ後、ゆっくりとルカは目を開ける。アルムが傍にいる事に気が付くと、中々に舌足らずな挨拶をしてくれた。相変わらず可愛いなあと頬を緩ませながらアルムもおはようと返す。

目を擦り、欠伸をひとつ。それから両腕を上げて大きく伸びをして。
ようやくルカは完全に目を覚ましたらしい。

「今朝は冷えますねえ」
「外は雪だよ。一緒に見に行こうよ」

返事も待たず、ルカの上着を引っ張り出しながら言う。
柔らかな微笑みでそれを受け取り着込んだルカは、今か今かと準備を待っていたアルムの手を握った。

「わ…白銀の世界とはまさにこの事ですね」

外に出てすぐにルカは感嘆の声を上げる。それから二人で雪景色を暫し眺めて回った。
雪をかぶった木の下に赤い実をつけた低木が見えたので、取りに行こうとアルムは「少し待ってて」とルカに告げてから離れる。

「お待た…」

枝を少し拝借して戻ると、ルカが自分の足元の雪を踏み固めて楽しそうに笑っていた。
微笑ましいと思いながらアルムはその様子を眺める。

周辺に踏める雪がなくなって、満足そうに顔を上げた所で「楽しかった?」と尋ねてみると、目をしぱしぱさせた後かあっと頬を赤らめて。

「……見ていたんですか?」
「見てた。無邪気で可愛いなーって」
「ソフィアでは雪は滅多に降らないでしょう?つい、夢中になってしまって…」
「いいじゃないか。今しかできない事、沢山しよう」

宥めるようにルカに言葉を掛けた後、雪を集めて形を作る。そこに持ってきた低木の実と葉で顔をつけて。

「ほら見て。雪うさぎだよ」

アルムの手のひらにちょこんと乗ったそれを見て、ルカは「とても可愛らしいです」と目を細めた。

「アルムくんは器用ですね。羨ましい」
「へへ…。ほら、ルカも何か作ってみて」
「いえ、私は器用な方でないので…」

渋るのを何とか説き伏せて作らせた葉っぱまみれの雪だるま…ルカ曰く“アルムくん”は、どうご祝儀をつけてもアルムには似ていなかった。



新雪踏み締める時の音と感触ほんと気持ちいいですよね。
ゴム長靴履いて年甲斐も無く歩き回るの好きです。ダイブするのもっと好きです。

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