部屋飲み | ナノ


アルムとルカ。フォルスとパイソン。
4人で初めて酒を酌み交わしてからというもの、街での滞在が決まった日の夜には4人で集まり宿の部屋でささやかな宴会をする事が増えた。

アルムが解放軍に入る前のルカの話。
フォルスとパイソンによる、お互いが子供の頃の笑い話の暴露大会。(言われる側は恥ずかしい思い出なのか必死に止めに入っていた)
行軍中の小さな出来事などなど。

それぞれ好物と飲み物を持ち寄り、ほろ酔い気分に浸りながら他愛もない話をしていた。

「さールカ。飲んで飲んで」

フォルスが見立てたという果実酒は甘党のルカの口に合うものだったらしく、飲んでいる姿は心底幸せそうだった。
しかし、ルカのグラスが空く度すぐさまパイソンが酒を注ぐので、酔いが回ってしまう事を心配したフォルスが「飲ませすぎじゃないか」と制す。
すると、ルカは微笑んで。

「おきづかいありがとうございます。わたしは酔っていませんから、だいじょうぶですよ」

言って、パイソンの持つ酒瓶にグラスを近付ける。再び酒が注がれた。
酔っていないとは言うけれど、心なし呂律が回っていない。加えて今まで見た事も無い程に赤くなっている顔。
心配になって、アルムは口を開く。

「ルカ、本当に大丈夫?」
「わたしはお酒につよい方なんですと以前もうしあげたはずですが。あるむくんのわすれんぼさん」
「でも顔も赤いから」
「へいきですったら。もう…分からずやさんはこうですよ」

えいえい、と人差し指でアルムの額を数度小突いてグラスを煽る。
それから意味も無く笑い声を上げ始めたので、やっぱり酔っているじゃないかとアルムは思った。

「分かった、分かったから。ルカは本当にお酒に強いんだね」
「ふふふ…、分かればよろ…し、い…」

普段の彼にはあまりない口調で言い、満足げに顔をふにゃりとさせる。
更にむにゃむにゃ何かを告げてから、アルムの肩に寄りかかって眠ってしまった。

「パイソン!」
「やー、どんどん飲んでくれるもんだから、どこまで行けるか見たくてさ」

周りの部屋まで声が届かないようにというフォルスなりの配慮だろうか。
咎めるように幼馴染の名前を呼ぶ彼の声はいつもより控えめだ。
この口調で名前を呼ばれる事が日常と化しているパイソンは悪びれもせずに酒瓶を明かりにかざして中身の減りを確かめている。

アルムもそれを見たけれど、中身は底の方から四分の一ほどしか残っていなかった。
フォルスも数杯飲んではいたが今日はそこまで酔っていないので、半分以上はルカが飲んだと考えていいだろう。

「お前が珍しく気を遣っていると思って断り切れなかったんじゃないのか?」
「ルカはちゃんと断れる奴だよ。お前だって知ってるじゃん。ていうか珍しくって言い方…。大将、酷いと思わない?」

どちらの肩を持っていいか迷ったので、アルムは苦笑で誤魔化した。
それをどう取ったのか、特に気にする様子もなくパイソンは別にいいけど、と呟いて。

「この間分かったんだけどさ。ルカ、大将と一緒だといっぱい飲むみたいなんだよね。なんつうか…」
「信頼しているから、身を任せられるという事か?」
「なるほど。フォルスとパイソンみたいな関係だね」

フォルスの言葉に納得した様子のアルムに、パイソンは首を振った。

「甘えたいってのが正しいかも」
「甘えたい?二人きりの時はしょっちゅう甘えてくるけど…」

もう本当理性持たないくらいと付け足すと、パイソンはご馳走さんと手をひらひらさせ、それから更に続けた。

「素面だと色々…まあそれが何がかまでは分かんないけど。そういうのが邪魔だから、酒を理由にタガ外して普段できない事したいって感じ。大将、さっきみたいにグリグリされた事ある?」
「そういえば…」

微笑みながら頭を撫でられたりする事はあるものの、ふざけたような仕草をする事は滅多になかったかもしれない。
そう思って、首を横に振ると質問を投げかけた本人は「な?」としたり顔をしてみせた。

「じゃあ、お前が酒をどんどん注いでいたのはルカの為だったのか」

見事な考察だとフォルスが感心しながら言ったのだけれど、パイソンは苦笑しながら。

「うんにゃ、単に酔い潰して大将に質問責めしたかっただけ。ルカってばすぐストップかけ…」

言い終わる前に、今日一番のフォルスの怒号が飛んだ。




考えるんじゃない、感じるんだ(自分でも何が言いたいか分からなくなった)

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