フォーク使おう | ナノ


幼馴染達との手合せが終わり、アルムは訓練用の剣を片付けに武器庫へとやってきた。
その時、ちょうど同じように手合せが終わったルカと鉢合わせる。

「アルムくんたちも終わりましたか。お疲れ様でした」

アルムと同じく訓練用の武器…ルカの場合は槍だ。それを手に持ち、ルカは微笑みながら軽く会釈をする。
ルカの槍と自分の剣とを交互に見比べて、アルムはルカが剣を持ったらどんな感じなんだろうと想像してみた。
剣を構えて相手の攻撃を全ていなし、一撃を叩き込んで最後に鞘に納める。

(どこをどう見ても絶対格好いいじゃないか)

これはぜひとも実際に見てみたいと思い、アルムはルカに手合せを申し込む。無論、剣を使っての手合せだ。
戦線では何が起こるかわからないのだから、槍以外の武器にだって多少の心得はあるだろう。

「剣は不得手なのですが…他ならぬアルムくんの頼みです。いいでしょう」
「本当!?嬉しいよ。ありがとう」
「どうかお手柔らかにお願いします」

二人で訓練用の剣を取り、武器庫から再び手合せ用の広場に戻る。
位置につき、数回素振りをしてからルカは構えを取った。

「いつでもどうぞ」

言って、鋭い視線をアルムに向ける。戦場の時と同じだった。
いつもの人好きする表情は一体どこへ行ってしまうのか。でも、このギャップもたまらなくアルムは好きなのだ。

「じゃあ…行くよっ!」

凛とした構えに見惚れるのも程々に、アルムはルカに向かい駆け出した。攻撃が届く範囲まで距離を詰めて、剣を振るう。

ルカはそれを剣心で受け止めた。剣と剣とがぶつかり、金属音が響く。無理に力押しをせず、アルムは一度距離を取ることにした。

「中々に重い剣撃ですね。押し返せませんでした」
「僕だって鍛えてるから」

もう一度ルカに向かって駆けて行く。
先程と同じく、距離を詰めてから剣を振るう……ように見せかけて、今度は背後に回る。
しかし、ルカはそれを読んでいたらしい。振るった剣は空を切り、アルムは体勢を崩して地面につんのめってしまった。剣を落としてしまいそうになったが、寸での所で柄を握り直す。
刹那、狙いを澄ましたルカの一撃がアルムを襲った。

「うわぁっ!」

剣で弾く余裕はないと判断し、慌てて篭手で剣先を受け止める。
何とか体勢は建て直せたが、ルカは攻撃の手を緩めない。
それに陽動も巧みで、どの動きも逐一意表を突いてくる。反撃の糸口も掴めず、アルムは防ぐので精一杯だった。
どんどん逃げ道を塞がれて、最終的には広場の隅に追い詰められてしまう。

「まいった!」

とどめとばかりに喉仏すれすれに剣先を翳され、アルムは白旗を上げる。それと同時に、ルカは剣を引っ込めて、穏やかな表情を作った。

「いやあ、危なかったです。やはりアルムくんは強い」
「そう言いながら勝っちゃうんだもんな。剣は得意じゃないって嘘?」

正直に言うと、アルムはルカの剣を追い掛けるのに忙しくて、ルカの表情や動きを見ている余裕が全く無かった。
手合せ前の言葉も、自分を油断させるためにわざと言ったのではないかと疑ってしまうほどに。

「本当ですよ。たまたま運が良かっただけです」
「運も実力のうちっていうじゃないか」

頬を膨らませるアルムの手を取って、宥めるように。

「……なら、実践経験の差でしょう。アルムくんは若いですし、恵まれた才能もある。経験を積めば私などすぐに赤子扱いできるようになります」

これは建前ではなく、ルカが日頃から思っていた事だ。
先程言った事よりも説得力があったらしい。アルムは満更でもない顔をして「そうかな」と呟いたので、ルカも「そうですよ」と返す。

「じゃあ実践で自信がついたら、また剣で手合せをお願いするよ。勝ち逃げされるのは嫌だし」

次は剣だけじゃなくてルカの事も見るんだと意気込んでそう告げる。
するとルカは冗談ぽく「首を洗って待っています」と笑って言った。



動きのあるシーン書くのって難しいですね

  TOP 

小話部屋TOP

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -