デートその1 | ナノ
デート話その1
日が昇り、外から人の気配がし始める。
目を覚ましたルカがカーテンを開けると、雲一つない青空が目に飛び込んできた。
行き交う人々や風に揺れる木々をひとしきり眺めてから、まだ夢の中にいる恋人の元へ向かう。
「アルムくーん…」
眠る彼のベッドの脇に腰掛け、囁くように呼んでみる。聞こえたのは寝息だけで返事はない。
「アルムくん、朝ですよー…」
音量は同じに、今度は耳元で。
すると、仰向けだった体が身じろいでルカの方を向いた。それでもアルムは起きる気はないらしい。
ゆっくり、人差し指で彼の頬を何度かつついてみる。
健康的ではあるものの、日焼けをしていていて少しざらついた肌は吸い付くよう…まではいかないけれど、ずっと触れていたくなるような。不思議な引力のある肌触りだった。
何の反応もないので、次はほんの少し力を込めて押しこねる。
「んぅー……」
唸り声を上げた後、ルカの指から逃れようとまた体が仰向けになる。
眉間に皺が寄っていたのでそっと指を離して様子を窺うが、目を覚ますには至らない。
「ふふ」
段々楽しくなってきて、今度はもう少し大胆に行こうと、座ったまま腰を屈めて額に口づける。次は眉間、頬に鼻先。そして唇の順番で繰り返し、繰り返し。
「……何してるの」
6順めの鼻先への口づけで、ようやくルカはアルムの声を聞くことができた。
「おはようございます。アルムくんが起きてくれないので、悪戯をしていました」
悪びれもせず微笑み、ルカはようやく目を覚ましたアルムに挨拶をする。
大きな欠伸をしてからゆっくりと起き上がり、眠さの残る掠れた声でアルムも返した。
「……普通に起こしてくれればいいのに」
「あんまり気持ちよさそうに眠っているものですから、忍びなくて」
「嘘でしょ、それ」
口を尖らせながら言ったアルムにルカは「はは、ばれてしまいましたか」と観念したように言葉を紡ぎ始めた。
「今日が楽しみで、早くに目が覚めてしまったんです。外は絶好のデート日和ですよ」
「ああー……」
はにかんだ笑顔で言われて、アルムは思わずルカの頬を両手で覆う。それから間髪入れず、噛み付くように唇を重ねた。
舌も入れて咥内をたっぷり味わい、満足したところで顔を離してやると、ルカは息苦しさで頬を上気させていた。それから咎めるような目でアルムの方を見つめて。
「…いきなり、何てことを、するんですか…」
「ルカがあんまり可愛いから、悪戯したくなったんだ」
さっきのお返しとばかりに、アルムは笑って言った。
大体話がまとまったので1つ。
短いの(これ)、短めの、短いので3つになる予定。
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