ロマンだと思うんだ | ナノ
一日読書にお付き合いするアルムくん




朝起きて、それから二人してゆっくり朝食を食べて、お茶を飲みながら、他愛もない話をする。
好きな人と二人きりでのんびりした時間を送れるというのは、何て幸せなんだろうか。
つい先程まで、そう思っていたのだけれど。

話に一段落がつき、ルカは早速本棚から数冊の本を取り出した。
そのままアルムのいるテーブルの向かいの椅子に腰掛けると思いきや、向かった先はベッドの上。

「アルムくんも来て下さい」

甘えるように手招きをするものだから、アルムは思わず唾を飲み込んだ。
本を読みたいと言っていただけなので、それ以上の事は絶対に起こらないと分かっているはずなのに。
どうにもアルムにはルカが誘っているようにしか見えないので、心のどこかで期待してしまう。

言われた通りベッドの上まで行く。
ルカが正座をしていたので、つられて正座で向かい合せに座ると、きゅっと抱き締められた。

「アルムくん…」
「ルカ…」

背中に腕を回し抱き返そうとすると、そのまま寝かされてしまった。アルムの頭は今、ルカの膝の上。

言わずもがな、膝枕というやつである。

「え」

事態が呑み込めず、アルムはつい困惑の声を漏らしてしまった。

「私はこのまま本を読んでいますから、アルムくんはゆっくり休んでください。何日も朝方まで頑張っていたんです。まだ眠り足りないでしょう?」
「でも、ずっと正座してるのつらくない?」

半分は純粋な疑問、もう半分は理性が持たないので断りたいな、という口実。

「慣れれば楽な姿勢なんですよ」

微笑みながら言われ、アルムは自分の理性との一騎打ちを覚悟した。

「ルカが平気ならいいんだ。ありがとう、よく眠れそうだよ」
「それはよかった。明日は楽しみましょうね」
「うん。おやすみ」
「おやすみなさい」

ルカは目を細めておやすみを言い、アルムの額に口づけた。
正直な話そういう事をされると、興奮の方が勝って目が冴えるから困るんだけど…と思いつつ、いつかは眠れるだろうと目を閉じる。

__________


(眠れない…)

一体、どのくらいの時間が経ったのか。アルムはまだ眠れずにいた。
聞こえるのは本のページが捲れる音とルカの息遣い。
何とか膝枕から逃れようと、さり気なく寝返りを打った。
当然頭はベッドのシーツの上に落ちるので、アルムもある程度の衝撃が来るのを分かった上でやったのだが。

「…おっと」

落ちそうになった頭を空いている方の手で受け止められ、丁寧に膝の上に戻された。
それから胸をぽんぽん叩かれる。

(うーん…この上なく幸せな状況なのは分かるんだけどなあ…)

アルムの戦いは、まだまだ始まったばかり。





膝枕させたかったんや

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