べりーしょーとしょーと | ナノ


妹のデューテを見つけ、先程の出来事を話す。
すると彼女は呆れたような顔をして。

「お兄ちゃんてホントに魔法の事以外は馬鹿だよね」

兄として挨拶をしに行っただけなのに罵倒され、リュートは憤慨した。
お前は何てことを言うんだを皮切りに、くどくど説教を始めようとした所で「最後まで聞いてよ」とファイアーの魔法を飛ばされる。

「アルムはルカの王子様なの」
「お、おうじ?」
「そう!悪い魔法使いから大切な人を守るべく、颯爽と現れた王子!」

ハッキリ言って、リュートには妹の言っている事が全く理解できていなかった。
王子様と言われて、アルムの血筋はやんごとなき家系だったかと悩んだくらいだ。

「デューテ、お前の言う事は抽象的すぎて訳が分からん」

一体どういう事なんだと、再び罵られるのを覚悟で尋ねてみる。
すると予想したとおり「そんなんだから友達いないんだよ」と辛辣な一言を浴びる事となった。

「もうハッキリ言っちゃうけど、アルムとルカって友達じゃないんだよ。恋人同士なの。なのにお兄ちゃんが考えなしにルカに迫るから、大事な恋人が毒牙に掛けられてると思ったんでしょ」
「…そういえばルカの手を取っている間、アルムはいやに不機嫌そうだったな」
「手?!ボクだってルカの手握ったことないのに!」

頬を膨らませてから「お兄ちゃんズルイ!魔道馬鹿!」と三度リュートは妹から憎まれ口を叩かれた。

「そんなのどうやってもルカの事口説いてるようにしか見えないじゃん!」

友達の恋人口説くとかサイテー。どう足掻いても絶交だよ。と付け加えた所で、リュートの顔が一気に青ざめて。

「そっ…、それだけは嫌だ!どうすればいい!?」

初めての友人が離れて行く事だけは避けたいらしく、慌てふためいた様子で妹に縋り付く。
これではどちらが年上か分かったものではない。
どうするもこうするもアルムの誤解を解くしか道はないので伝えてやると、今度はその解き方を聞かれた。

「あーもう。ダメな兄を持つと苦労するなあ」

溜息をひとつ吐いて、デューテは兄がルカと友達になりたいと思ったその経緯を聞いてみる。少しの間の後。
「嬉しかったんだ」とつらつら理由を話し出した。

「俺の魔法を褒めてくれた。話も最後まで聞いてくれた上に、あんな風に微笑んで肯定的な事を言ってくれたのはルカが初めてだった」
「つまり、言動全部が嬉しかったと」
「そうだ。だから友達になってもっと話をしたい。笑ってほしい」

デューテ自身もルカの事を気に入っているので、兄の気持ちは痛いほどよく分かる。分かるのだが、これをアルムに伝えるとなるとどうなるか。

(…この動機だと益々勘違いされそうな予感がする)

友達とは言っているが、無自覚だけど恋しちゃってます発言にしか聞こえない。
そう取られたら宣戦布告を言い渡すようなものである。
デューテは必死に必死に考えて、動機を基にオブラート四重くらいに包んだ言い方を伝えてあげた。
その甲斐あってか、誤解はなんとか解けたとか。

  

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