小話いろいろパラレルへん | ナノ


湯船に浸かり、しっかり温まって浴室から出る。
拭き残しがないように体を拭き、きちんと寝間着に着替えてから居間に戻って。

「ルーカー。お風呂空いたよー」

アルムの声掛けにルカは返事をして、用意していた着替えを持ち浴室へ向かった。
その背中を見送って、少々物思いにふける。

(習慣って、変えられるもんなんだなあ)

これは少し間違いで“変えられる”というよりは“変えざるを得なかった”というのが正しい。
アルムは以前はそこまで丁寧でなかった。体の拭き方は廊下が濡れなければいいやと考えていたから結構といい加減だったし、居間に戻る時なんて下着1枚の事だってあった。
それを見たルカが「仕事に疲れた中年男性じゃないんですから」と、とんでもなく苦い顔をしながらも体を丁寧に拭きなおしてくれた。
それは嬉しかったのだけれど、すぐ後から入浴の効果と注意点を延々と述べられたのでルカの前では二度としないと心に誓ったのである。

「もう。また髪を濡れたままにして」

冷えた麦茶をちびちび飲みつつ考えていると、後ろから声がして少し驚いた。
そんなに長い事考え込んでいただろうか。

「ごめん、ボーっとしてて。それに暑いし」
「今は暑くても、放っておくと湯冷めしてしまいますよ。いつも言っているでしょう」
「うん。それは覚えてるけど」

いつもならここで大人しくドライヤーを取りに行くのだけれど、何となく甘えたい気分になって。
ころんと床に寝転がった。
ルカは顔を顰めて、アルムの頭のすぐ脇に腰掛ける。それから、彼にしては珍しく強めの口調で。

「こらアルムくん。しゃんとなさい。いつもの格好いい君は何処へ行ったんですか」
「ルカが乾かしてくれたら格好いい僕に戻れる気がする」

腰に抱き着いて頬ずりをし、お願いと強請る。この“おねだり”をされると、ルカは弱い。

「まったく…仕方がないですねえ。今日だけ特別です」
「やったー!ルカ大好き。愛してる」
「はい。私もアルムくんが大好きですよ」
「えぇ?愛してるは?」
「愛してるに決まってます」

それから唇にひとつキスを落としてやると、アルムは気が済んだらしい。笑みを浮かべながらうんうんと首を縦に動かして、ルカの腰から腕を放した。

__________


「…なんだか眠くなってきた」

乾かす前、仕方なくやってあげるんですよ、と言ってきた割にルカの手つきはとても丁寧で優しい。
ドライヤーから出る温風も手伝って、その気がないのにウトウトしてしまう。

「寝てしまっても構いませんよ?起こしてあげますから」

前髪に風を当てながら言うと、やだ、寝ない。と返ってきた。

「今日だけ特別って言ったじゃないか。しっかり覚えておきたいから」
「ふふ…」

アルムくんたら可愛いと言いかけたけれど、それを言うと彼はへそを曲げてしまうので思うだけにした。
甘えてみせたり我儘を言ったり。無意識なのかもしれないけれど、年下である事を最大限に活かした言動は、可愛い以外の何物でもない。

今回だけと言ってはみたけれど、同じように強請られてしまったら自分はどうするだろう。

「では、お話ししましょうか。目も冴えると思います」
「うん、そうする」

ルカは今、後頭部を乾かしにかかっているためアルムの背中側に座っている。
普通に話したのでは風の音で声が届かないので、話すには声を少し張る必要がある。目覚ましには丁度いい。

学校での事を話したり、ルカの仕事の話を聞いてみたり。ちゃっかりデートの約束を取り付けてみたり。
日取りが決まった頃には、風は仕上げの冷風に切り替わっていて、アルムの目はすっかり冴えていた。

「乾きましたよ。お疲れ様でした」
「ありがとう。僕、格好よくなったでしょ?」
「はい。とても」
「次のデートの時にはもっと格好よくなるからね。期待しててね」
「ええ、期待してます」

ほくほくした顔をしながら言葉を投げかけるアルムに、ルカもひとつひとつ答えてやる。

「また僕にドライヤーかけてくれるよね?」

勢いはそのままに、どさくさに紛れて聞いてみたけれど、ルカは引っかかる事なくキッパリ言い放つ。

「それは難しい相談ですねえ」



でもアルムくんがお願いすればまたやってくれるんやで。ルカママほんとママ
あの世界にドライヤーがあるのか分からなかったのでパラレルで
  

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