小話いろいろパラレルへん | ナノ


ルカはお料理ができないとのことなので(ひろず情報)アルムくんのためにお料理を頑張るお話
付き合いたてのころと考えていただければ…

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帰宅ラッシュも終わり、多くの人がくつろぎの時間を過ごすであろう時間。
外にも人や車の気配はあまりなく、しんと静まり返っている。

普段であればルカも恋人であるアルムと甘い時間を過ごしている…のだけれど、今日は違った。
外と同じく静まり返った室内でひとり、読書を楽しんでいた。

アルムが不在とか、喧嘩をして距離を置いているとか、そういうことではなくて。
テストが数日前に迫っているので、集中するためアルムが自室にこもっているのだ。

「アルムくん、勉強は捗っているでしょうか…」

読んでいた本を閉じて、独り言ちる。
時計の針は、そろそろ深夜になろうとしていた。夕食のとき「今日は頑張るから先に寝てほしい」と言われていたのだが、どうにも気になってしまって。

「夜食を作って、様子を見に行きましょう」

きっとお腹も空いていることでしょうし、と、ルカは台所へと向かった。

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冷蔵庫を開けてみる。
自分用に買っておいた甘味がずらりと並んでいる他は、使いかけの野菜や肉などが細々と入っているくらいだった。

「アルムくんなら、これだけでも立派な夜食を作れそうですが…」

今の冷蔵庫の中身だけでは何も作れそうにないと考えたルカは、もっと簡単に作れそうなものを探して収納を見てみる。

「これなら作れそうです!」

目に入ったのは、インスタントラーメンの袋。

以前アルムが作ってくれたものが店のものにも負けないくらい美味しくて、どんな特別な作り方をしたのか尋ねてみたことがある。
「茹でただけだよ」と返ってきたときには大層驚いた…と同時に、茹でるだけでこんなに美味しいものが作れるのならいつか挑戦してみようと思っていたのだ。

早速調理スペースに移動して、鍋に水を張る。
そこに袋の中身を全てあけ、おまけに玉子も割り入れ火にかけた。

「こうするだけで、あの美味しいラーメンが作れるなんて…」

以前食べたときのあの味を思い出し、頬が緩む。
しかし、アルムの「茹でただけ」を信じきっていたルカは袋に書かれていた“おいしい召し上がり方”の存在に全く気が付いていなかった。

ルカは料理があまり得意ではない。
言ってしまえば“あまり”ではなく“壊滅的にできない”ため、アルムに習って練習中なのだ。

それゆえの、先ほどの調理方法である。
どんなものが出来上がるかは、人並に料理ができる者なら簡単に想像がつくだろう。
ルカ自身は、アルムと一緒に食べたものが出来上がると信じて疑っていないけれど。

__________

まじまじと、出来上がったラーメンを見つめる。
“茹でるだけ”を忠実に守り余計な手を加えなかったおかげか、匂いは“それらしい”けれど。

「なんだか麺がのびているような気が…玉子に火が通るのを待っていたせいでしょうか…?」

さすがのルカも、(アルムが作ったものと)かなり見た目が違う事には気が付いた。
主な原因は水から茹でているためであるが、玉子待ちをしていたのもあながち間違いではない。
許容範囲であればこのまま持っていこうと考えて、一口すすってみる。

「………これはいけない。作り直さないと」

記憶とはだいぶかけ離れた硬さに、ルカは顔をしかめた。
失敗したものは後で自分の腹に収めることにして、再度台所に向かおうとした時だった。

「あっ!いい匂いがする!」

今はいないはずの人物の声が聞こえ、ルカはびくんと体を震わせた。
どうしてここに、と尋ねる前に、声の主__アルムは「お腹がすいて戻ってきちゃった」と照れ臭そうに告げると、ルカが作った“夜食”に視線を移して。

「これ、ひょっとして僕に作ってくれたの!?」

瞳を輝かせて聞かれてしまえば、頷いて素直に白状するしかなかった。

「でも、失敗してしまって。これから作り直そうとしていたんです。ですから…あっ!アルムくん!いけません!」

話し終える前にアルムがいただきますをして箸をつけ始めたものだから、ルカは慌ててアルムの元へ駆け寄った。

「それは私が食べます。すぐに作り直すので、少し待って…」
「やだ。僕はこれがいい。ルカが初めて作ったラーメンだもの」

絶対に渡さないつもりなのだろう。
アルムは丼をがっしりと掴んでそう告げると、再び麺を口に運び始める。
ルカも諦めきれずに丼に手をやったが、「だめだって言ってるじゃないか」と珍しく強めの口調で咎められてしまったので仕方なく、アルムの食べる様子を眺めることにした。

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「美味しかった!ごちそうさま」

麺と具だけでなく、スープまでしっかりと平らげて。空腹が満たされ上機嫌で告げたアルムとは正反対に、ルカは納得がいかない様子だ。

「お世辞は結構です。味見もしましたから」
「僕は本気で言ってるんだ。あの麺の軟らかさも、スープの味も玉子の硬さも、全部含めて美味しかった。一生忘れない」

まっすぐ見つめてくるアルムの瞳は真剣そのもの。素直に受け取ってもよいのだ、と判断したルカはほうと肩を撫で下ろし、口を開いた。

「お粗末様でした」

  

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